中国(深圳)取材報告-もはや後進国ではない

2018/06/20

深圳の奇跡

21世紀は「中国の世紀」です。これは単なる予測ではなく、紛れもない現実になりつつあるのです。

今月上旬、中国の南東部、深圳(シンセン)を初めて訪れました(写真1)。香港に隣接する、中国の改革開放を象徴する都市です。短期間でこれほど劇的に発展した都市は、世界史上ほかに例をみません。沿海部は漁村、背後は森林だった一地方が、約30年で驚異的な大都会へ変貌をとげたのです。わずか3万人だった人口は、現在1,200万人を超えています。と言っても、広大な土地に超高層ビル・マンションが効率的に建てられているので、多くの緑が残り、住環境は良好です(深圳駅周辺など一部を除く)。

「世界の工場」から「アジアのシリコンバレー」へ

1980年、深圳は経済特区に指定されました。以後、中国各地から多くの人々が、海外からは技術や資本が流入しました。これに伴い製造業を中心に急発展、「世界の工場」と呼ばれるに至ったのです。

現在の深圳は、イノベーションを担うテクノロジー企業が数多く拠点を構えています(テンセント(図表1)など)。そのため「アジアのシリコンバレー」と言うべき、先進的な地区が広がっています。また「エコシティ」が標ぼうされ、例えば公共バスの動力は全て電気です。「日本は進んでいて、中国は遅れている」と思い込んでいる人(筆者も3年ほど前まではそうでしたが)は、固定観念を打ち砕かれます。

キャッシュレス化の現場と背景

有名な例をもう一つ挙げると、深圳ではキャッシュレス化が進み、買い物は基本的に電子決済です(スマートフォンに表示されるQRコードを店頭で読み取らせ、紐付けられた自分の口座から代金が引き落とされる。なおクレジットカードは、ほぼ淘汰)。また、無人コンビニや無人スーパーも増えています。

電子商取引、病院などの予約、学習などにおいて、スマートフォンはすっかり必需品となりました。新しい仕組みを抵抗感なく採り入れるのが深圳の人々です(平均年齢33歳という若さも寄与)。このような気風は、インターネット化・バーチャル化という時代の潮流に乗る上で、大きな強みとなります。

「日本は自由、中国は不自由」は正しいのか?

管理国家の中国ではイノベーション(新機軸)が生まれないだろう、というのが以前の通念でした。

実際には、深圳のビジネスや生活において、人々は、日本の私たちよりも柔軟で自由に生きています。特にテクノロジー企業のオフィスでは、皆、伸び伸びと働いている様子がうかがえました。むろん派手な反政府運動はできませんが、そうした政治的制約が仕事の足かせになることは多くありません。依然として海外製品の模倣が多いのが現状とはいえ、深圳発の技術が多数生まれるのは時間の問題でしょう。

「アメリカ・ファースト」は、米国のオウンゴール(自滅行為) 

中国への覇権シフトをわざわざアシストしているのが米国です。今月8~9日の先進7か国(G7)首脳会議では、通商政策での米国の孤立が示されました。そして翌週の米朝首脳会談を受けて、トランプ氏と金正恩氏との友好ぶりが、中国では大々的に(かつ、うれしそうに)報じられていました(写真2)。

米欧が築いた秩序や価値観に米国は自ら背を向けた、と中国は解釈しているのです。自由貿易、人権、民主主義などのことです。金融市場が危惧する米中貿易摩擦については、中国の政府や企業は比較的冷静に受け止めています。米国が利己的になるほどその威信は堕ち、自滅すると思われているからです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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