アジアの融和が日本経済の復活をもたらす
対決から融和へ
支持率を気にする政権が、そのアップを図る三つの方法があります。一つめは、景気を良くみせることです。二つめは、近隣諸国の脅威を叫び、対決姿勢を誇示して「強いリーダー」を演じることです。三つめは、世界の平和を力強く訴え、二つめとは逆に、他国との友好関係を積極的に構築することです。
安倍政権について言えば、一つめの方法であるアベノミクスはすでに行き詰っています。そのため第二の方法、つまり中国や北朝鮮の脅威をあおるという手段を一旦採用しました。しかしそれも限界です。そこで今、各国との融和という三つめの方法へ舵を切りつつあるようです。もちろん、正しい転換です。
目覚ましい日中関係の改善
融和機運を表象するのが、昨日、2年半ぶりに開催された日中韓首脳会談にほかなりません(安倍首相、中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領が参加)。北朝鮮問題や貿易での連携強化が主な目的です。
また最近、特に目覚ましいのは日中関係の好転です。先月には日中経済対話を通じ、前向きな意見交換が行われました。年内には、安倍氏の訪中が見込まれます(さらに来年、習近平国家主席の来日が実現する見通し)。日中平和友好条約の締結40周年を迎える今年、関係改善がついに本格化したようです。
劇的な展開をみせる北朝鮮情勢
北朝鮮については、日本政府などには全く予想できなかった方向へ、情勢が劇的に展開しています。
4月27日の南北首脳会談では、「歴史的」と呼ぶにふさわしい演出が行われました。これに対しては、具体的な成果が乏しい、との冷めた見方もあります。もちろん朝鮮半島の非核化に関し、楽観はできません。しかしもともとこの会談は、6月に行われる見込みの米朝首脳会談を前に、和解ムードを醸成することが主たる狙いでした。この点で、十分な成功を収めたと言えます。少なくとも、平和協定への重要な前進です。そうした融和路線が功を奏し、韓国・文大統領の支持率は約80%へ急上昇しています。
中国とインドの間でも信頼関係形成へ
そのほかにも、アジアでは先月、重要な出来事がありました。中国(習主席)とインド(モディ首相)による「非公式」の首脳会談が中国で行われ、緊密な中印関係、意思疎通の重要性が表明されたのです。
「アジアのリーダー」の座を争う中国とインドの間では、緊張が絶えません。昨年には、中印の国境付近で両軍がにらみ合うという危機に至ったほどです。その両者が、信頼関係の形成に乗り出したのです(モディ首相には、来年の総選挙を控え、対中関係を改善して景気を刺激したいとの狙いもあります)。
「アジアの融和」と「日本経済の復活」で支持率回復か?
世界は今、不和や争いで覆われています。最も危険なのは中東情勢ですが、西洋諸国間の亀裂(特に米国vs.欧州)も懸念されます。対照的にアジアは、「融和を通じた繁栄の道」をたどり始めたのです。
日本やインドの場合、中国はすでに最大の貿易相手です(図表1,2)。これをさらに推し進める点でも、安倍政権などが融和路線へ転じるのは極めて賢明です。例えば、中国提唱の壮大なインフラ整備計画「一帯一路」での投資機会も広がります。つまり日本経済復活の基盤は、対立ではなくアジアの融和です。それらを促すという正当な方法で支持率が回復するのであれば、「反・安倍」の人も文句を言えません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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