ドル安・円高という「ミステリー」

2018/02/26

米金利上昇でもドル安に

為替市場では今、「ミステリー(謎)」が生じているのでしょうか。米国の金利が上昇しているのにドル安・円高へ、という現象のことです。実際、対円に限らずドルの弱さが昨年からの傾向です(図表1)。

特に今年に入り米国の長期金利は急上昇し、一時3%に接近しました。一方、日本の長期金利は0%近辺なので、日米金利差が相当広がっています。にもかかわらず、ドル安・円高が進んでいるのです。

「うまい話」はない

しかし金利差で為替を説明するのは、もともと欠陥を含んでいます。より高い金利収入を得ようと、低金利通貨が売られ高金利通貨が買われる(その結果、円安・海外通貨高へ)という説明は、表面的にはもっともらしく感じられます。しかし少し考えてみれば、それは極めて疑わしいと気づくでしょう。

もしその説明が正しければ、誰でも簡単に儲けられるはずです。日本の超低金利は長期化が必至、よって円安トレンドが続く、となるからです。そして、海外債券を何も考えずに保有していれば、金利収入と為替差益の両方が得られる、となります。しかしそんな「うまい話」には、必ず罠が潜んでいます。

理論上は、円高・ドル安が自然

理論的には、実は逆のことが成り立ちます。低金利通貨の円が上昇し(円高)、高金利通貨が下落する、ということです。どのくらい円高が進むかと言うと、「うまい話」が成立しなくなるまで、つまり、金利差が相殺される程度に、です(ほかの要因を捨象すれば、例えば金利差が2%だと年率2%ほど円高に)。

次のような考え方も重要です。ある通貨が高金利なのは、そうでないと投資家にその通貨建ての債券などを買ってもらえないからです。特に今の米金利上昇は、米国のインフレ観測や財政赤字が主な背景です。そして、インフレは通貨価値の下落と同じことです。また、財政赤字は通貨価値を担保する政府の信用力悪化をもたらします。したがって米金利の上昇は、ドル高どころか、むしろドル安要因です。

「円売り・高金利通貨買い」は投機

むろん理論と現実は必ずしも一致しません。理論に反し、金利差と為替が同方向へ動くこと(日米金利差拡大でドル高・円安へ)も多いのです。高金利通貨の価値は上がる、との思い込みがそうした動きを促すからです。また、短期の投資であれば、インフレや財政赤字を懸念する必要はさほどありません。

しかしその本質は、あくまでも投機です。そのため何らかのきっかけで、理論が示す方向への調整が起こります(典型は2008年の世界金融危機)。よく「リスク回避→円高」となりますが、これは、ショックが与えられると投機的な行動(円売り・高金利通貨買い)が解消され、円が買い戻されるためです。

「謎」ではなく、理論への回帰

高金利通貨が下落するという説(金利平価説)は、「購買力平価説」と同様の含意を持ちます。高インフレ国の通貨は下落するというのが後者ですが、高インフレ通貨は通常、高金利通貨でもあるからです。逆に日本は低インフレ・低金利なので、円高が進むのは「謎」でも何でもなく、理論どおりです。しかも購買力平価によれば、円はまだ割安です(図表2)。かつ現在は、世界的な金融緩和相場からの脱却という、重大な岐路にあります。そのような環境変化は、理論への回帰を促すショックとなり得るのです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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