平昌五輪のメッセージ

2018/02/20

オリンピック精神

オリンピック(五輪)憲章がうたう目的の一つは「スポーツを通じた平和の推進」です。いま韓国で開催されている平昌(ピョンチャン)五輪をみると、その精神はまだ生き続けていると感じられます。

特に北朝鮮がこれに参加したのは、昨年の「緊迫」を思えば大きな進歩です。対話の機運も高まりつつあります(まだ不安定な金融市場にとって、明るい材料の一つです)。さらに、日韓関係が難しくなっている中、日本の安倍首相が開会式への出席という英断に踏み切りました。五輪精神に適うことです。

国と国が対立するのはなぜか?

北朝鮮には不純な動機もあるでしょう(米韓の亀裂誘発など)。それでも開会式における韓国との合同入場などは、南北融和への自然な願いを示しています。一方、日韓関係については、友好が突然深まるとはあまり期待できません。とはいえ日韓の選手が健闘をたたえ合ったりするのは、清々しい光景です。

そういった姿をみると、ある国民と別の国民がいがみ合う必要は全くない、ということを思い知らされます。そして、他国の「脅威」なるものに対し疑問を持つはずです。各国の政治家(権力死守のため)や一部メディア(商売上の理由で)が、「敵」への危機感をあおっているだけなのでは?との疑問です。

問題は若年層の反発

ただ、北朝鮮との融和を進めるのは、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領にとって大きな賭けです。韓国において、北朝鮮との融和、さらには南北統一に対し、若年層では反発する人が少なくないからです。文氏はもともと若い人の人気を集めましたが、その層が離反すれば、支持率低下は避けられません。

南北統一に対し若年層が熱意を欠く背景には、様々なことがあります。例えば、韓国では若年層の失業率が高めです(15~29歳で10%弱)。そのため将来不安が広がる中、財政を用いて北朝鮮を支援する余裕などない、と考えるのは当然かもしれません。よって文氏も、一方的には融和へ突進できません。

韓国経済の現況

ただし、韓国経済を全体的にみれば堅調です(図表1)。輸出に加え消費や投資も伸びているためです。これを受けて昨年11月、6年ぶりの利上げを行いました。株価や韓国ウォンも上昇しました(図表2)。

韓国の輸出依存度は日本よりも高く、かつ、輸出品の多くは日本と競合します。そのため、ウォン高は輸出には逆風です。しかし現在は内需も回復しつつあるため、さほど深刻視されていません。また、韓国企業は半導体などで高いシェアを制しているので、以前ほどにはウォン安に頼る必要はありません。

健全な競争を通じたアジアの発展

しかし輸出増は、大きな貿易黒字先である米国との間で摩擦をもたらしています。米国との関係は、北朝鮮への対処でも足並みが乱れているだけに(米国は圧力重視)、韓国には慎重な対応が求められます。ただ、これらを機に、米国依存からの脱却という点で韓国は日本よりも先を走ることになりそうです。

そうした点も含めて、日韓が自主性を取り戻し、互いに健全な競争を行うことは、アジア全域の平和と経済成長にも資するでしょう。そのような意味で、平昌五輪は一筋の光明を投げかけています。日本としては、平昌五輪の大成功を願い、それをたたえるのが、高邁な五輪精神にふさわしいと言えます。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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