グローバル化で何が起こるか?
問題は「反グローバリズム」
日米の株式市場は今週、一旦大きく下落しました。ただ、この動きは一時的な調整に終わる可能性が高そうです。主要国の景気が堅調であることに、特段変わりはないからです。スイスで先週開催された世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)でも、当面の経済に関し、総じて楽観論が表明されました。
ただしダボス会議の主要テーマは、グローバル化やテクノロジー化についてでした。この会議は「エリートのパーティ」とも冷笑されますが、グローバル化の促進などには、一応の役割を果たしています。この会議に今回登場したのが、「反グローバリズム」の象徴とも見なされる米国のトランプ大統領です。
救世主トランプ?
ところがトランプ氏は今回、粗暴な言葉を極力封印し、エリート(政治や経済界の首脳)らを安心させました。そうした「大統領らしい」トーンは、米議会で昨日行われた一般教書演説でも同様でした。
ただ、これらの演説ではトランプ氏らしいところもみせました。株高や雇用の回復など明るい面を、大げさにアピールしたのです。振り返ると、同氏は1年前の大統領就任演説で、米国の暗黒面を叫び立てました。それはまるで終末論のようでした。その国を、わずか1年で見事に救済したのでしょうか。
政治宣伝の手法は日米共通
そのようなトランプ氏のスピーチを聞き、感動の涙を流す人は少ないでしょう。都合の良いデータを取り出して「悲惨だった過去」と「輝ける現在」を対照させるのは、日本も含め政治の常とう手段です。
実際には、米国の経済成長率は昨年2.3%と、例年に比べ突出して高いわけではありません(図表1)。雇用の増加については、むしろ鈍化しています(図表2)。また、好景気が事実だとしても、政策のおかげではありません。大きな規制緩和はさほど実行されておらず、減税の効果についても今後のことです。
「強いドル」主義者へ転向?
ただし、トランプ氏にも良い部分があります。それは、たまには誤りを修正することがあることです。
例えば同氏は従来、ドル安を好んでいました。しかし先週、最終的には強いドルを望む、と言い出したのです。たしかに通貨価値は国の信用力を表わすので、ドル安と「偉大な米国」は矛盾します。これに気づいたのだとすれば、円安が良いという先入観を改めない日本の一部の人よりは、よほど素直です。
グローバル化→世界経済の成長→ドル安
もう一つ、ひとまず好感されているのは、トランプ氏が反グローバリズムを抑えている点です。ダボス会議でも、米国だけの繁栄を目指すのではない、などと述べ、国際協調に歩み寄る姿勢をみせました。
反グローバル化や米国の「鎖国」が非現実的なのは、トランプ氏も知っています。自身がグローバル企業を率いてきたからです。米国の産業や家計は安価な輸入品の恩恵を得ていることも、よくわかっているはずです。事実、同氏の店舗(写真1)が扱う商品を調べたところ、多くがアジア新興国製でした。
グローバル化が続く以上、貿易などを通じ世界経済の成長も続くでしょう。その場合、投資資金は米国以外の国へ分散されます。そうした経済の基本論理は、トランプ氏の発言がどうあれ、簡単には変えられません。よって、ユーロや円などに対するドル安圧力は当分継続する、と予想するのが自然です。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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