米国政治の機能不全とシリコンバレー
政府機関の閉鎖が現実のものに
米国政治の機能不全をみていると、あの国は二流国へ転落した、と断定したくなるかもしれません。
先週末には、ついに政府機関の業務停止(警察など必須機能を除く)が現実のものとなりました。業務遂行に必要な「つなぎ予算」の決議に失敗したからです(米国では、現行会計年度(2017年10月から)の本予算がいまだに編成できずにいるため、暫定の「つなぎ予算」を更新し続けることで対応)。今週、2月8日までの予算が成立し業務再開となったものの、こうした混乱は今後も十分起こり得ます。
「政治と経済は別」ではない
予算編成は、議会の最も基本的な役割です。しかし党派対立のために、その役割すら果たせないのが今の米国政治です。さらに事態をこじらせているのが、トランプ大統領です。こんなときこそ自慢のディール(取引)能力を発揮すべきであるのに、予算や移民に関し、自身の発言が揺れ動いているのです。
大統領就任後の1年間、トランプ氏は数々の騒動を巻き起こしました。ただ、経済への実害はまだ目立っていません。そのため、政治の混迷をよそに株式市場は絶好調です。しかし、予算は当然ながら経済活動に直結します。よってこれをめぐる混乱が長引けば、政治と経済は別、とは言えなくなります。
「自由と民主主義」の代償と魅力
しかしここで、見方を少し変えてみることも必要です。つまり米国の面白さは、トランプ氏のように型破りな人物が国の頂点に立ち得るところにある、とも言えます。自由と民主主義にこだわる以上、避けて通れない問題なのかもしれません。同氏は、あくまでも民主的な手続きで大統領に選ばれたのです。
そうした自由な気風は、多くの問題とともに、米国が持つ魅力の源泉です。世界中の意欲的な人々を惹きつけるのは、やはり米国です。そうである限り、米国の繁栄は終わったと断じるのは早いでしょう。
なぜシリコンバレーでイノベーションが生まれるのか?
特に重要なのは、イノベーション(革新)を起こす力です。それを象徴するのが「シリコンバレー」にほかなりません(西海岸地区に位置し、世界的なテクノロジー企業が集積する広大な地帯。写真1)。
昨年12月、そのシリコンバレーを見学しました。直ちに気づくのは人々の多様性です(白人は人口の約3分の1)。浸透しているのは、自由と個性、創造性が尊重される文化です。そして、「エコシステム(生態系)」は世界一です(図表1)。起業家、大学、金融などが有機的に連携・機能しているのです。全体的な文化とシステムが強さの源泉である以上、ほかの国や地域は容易に模倣できません。シリコンバレーでは中国の都市をライバルとして挙げる人もいますが、すぐに追い越されるとは考えられません。
米国の強さは不変だが・・・
よって米国を評価するには、ワシントン、ニューヨークに加え、シリコンバレーも観察すべきです。実際、世界中の生活や仕事を変えているのは、シリコンバレー発の製品・サービスです(携帯端末など)。
そうした強さは、政治機能が多少麻痺したくらいでは損なわれません。ただし、トランプ政権が極端な移民制限を行ったり、ハイテク産業(シリコンバレーは一般に「反トランプ」)に対し不合理な規制を導入したりすれば、話は違ってきます。その意味でも、政治と経済は別、と割り切ることはできません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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