2018年の展望-真のリスクは何か?

2018/01/10 <>

株高の理由を再整理  

年明けの金融市場は明るいムードに包まれました。特に株価は、昨年の勢いが続いています(図表1)。

これには相応の理由があります。何より、当面の世界経済は適度な成長を維持するでしょう。米国は利上げを進めていますが、それでも好景気は妨げられていません。新興国から米国への資金流出も、特段起こっていません。米国などではさらなる金融引締めが行われる見込みですが、あくまで慎重に進められるでしょう。もし経済に変調が生じたとしても、今や米国では、逆に利下げという手段が使えます。

昨年の教訓 

これに対し政治や軍事面においては、不透明な要素が少なくありません。といっても、これらに伴うリスクは、経済活動を直撃するとは限りません。そのため、それらを理由に金融市場が一旦動揺しても、多くの場合、一時的なものにとどまります。これこそが、昨年の経験によって得られた重要な教訓です。

昨年も政治面の悪材料には事欠きませんでした。米トランプ政権の迷走、各国の偏狭な国粋主義、中東や北朝鮮の紛争懸念、などです。しかしどれも、市場の楽観を大きく変えるには至らなかったのです。

北朝鮮をめぐる進展と嬉しい事実

朝鮮については、南北間の対話が始まりました。核放棄につながる可能性は低いとはいえ、まずは歓迎すべき進展です。戦争の多くは、意思疎通の失敗や、国民一丸の興奮(一番陥りやすいのは日本です)から起こります。そうした意図せぬ事態を避けるには、対話を通じて正気を取り戻さねばなりません。

北朝鮮問題に関し、米国で確認された嬉しい事実があります。米国において、大半の人はこの問題を冷静に受け止めているということです。少なくとも、本当の「国難」だと大騒ぎしている人は、ほとんどいません。よって、米国がいきなり武力行使に踏み切る可能性は、極めて低いと確信できるのです。

今年の二大リスク-中国経済と米国政治 

このように、切迫したリスクはたしかに見当たらないようです。しかし今年の後半には、今よりは市場の変動性が高まるでしょう。そのため日本株も、今年半ばには一旦ピークを打つ可能性があります。

経済の焦点は中国の動向です。新興国から脱していくにつれ、その成長ペースが鈍化していくのは自然かつ健全です。ただ、市場は中国の動きに過剰反応するだけに、要注意です。政治では、米国の中間選挙(11月)が今年最大のイベントです。米議会は現在、上下両院をトランプ大統領の属する共和党が多数派です。しかし中間選挙は政権の信任投票と言えることから、共和党の苦戦は必至とみられます(図表2)。同党は大企業・投資家寄りと思われているため、その大敗は、市場の不安材料となるでしょう。

長期的な問題-欧州と日本について 

欧州や日本では、内部の対立や矛盾が浮き彫りになるはずです。欧州では、統合深化という方向は変わりません。ただし、それに反発するナショナリズムが先鋭化する恐れは残存します。日本に関しては、二大国間の狭間(軍事では米国、経済では中国に依存)で、自律的な国際的地位を築けずにいます。実際、北朝鮮問題では存在感を示せず、また、中国主導の経済圏「一帯一路」には大きく出遅れました。

それらは景気や株価の急落要因にはならないかもしれません。しかし株高で有頂天になるあまり、そうした根本問題から逃避する(この5年間の日本のように)、という愚行は繰り返したくないものです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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