トランプ氏と日本の1年
日本の平和を証明した、日米首脳「会談」
日本を含むアジアの現状は、緊迫化する中東情勢などに比べると、はるかに平和だと言えるでしょう。
一部の人が危機をあおる北朝鮮問題も、本当は、さほど切羽詰った段階ではなさそうです。そのため今般、米国のトランプ大統領と日本の安倍首相は、ゴルフや食事を存分に楽しむことができたようです。「国難」のもとにあるはずの、この日本においてです。北朝鮮情勢の鎮静化は、むろん良いことです。
トランプ氏にとって北朝鮮問題とは?
しかし、全員にとって平和が望ましいかと言うと、そう簡単ではありません。国への忠誠心を高める上では、適度の危機が役立ちます。また、軍需産業に対する紛争などの意義は、言うまでもありません。
支持率が低迷するトランプ氏にとっても(図表1)、北朝鮮問題はそのような位置づけなのでしょう。そして今般、米国製の武器をもっと輸入するよう、日本に求めました。安全保障と貿易問題をつなげるのは、批判されて当然です。ただ、対日貿易赤字を一貫して問題視し、また、全てを損得で判断するのが同氏です。よって、意外な要求ではありません。そうした単純な部分が、同氏の長所かもしれません。
1年間の総括
ただし、並外れた単純さは、「自分第一主義」が同居する場合、大きな短所となります。特に、偉大な国であった米国の大統領としては、尊敬を集めることが困難です。トランプ氏とは、そうした人物です。
世界中の人を驚かせたトランプ氏の大統領選勝利の後、1年がたちました。この間、はっきり確認できたことが三つあります。第一に、人種や貿易に関する偏見など、同氏の基本的な考えが変わることはない、ということです。そのため第二に、人権や自由貿易を尊重する人の多い米国で、同氏の政策がうまくいくことはない、ということです。しかし第三に、それでも米国の経済は堅調だということです。
トランポノミクスは予想以上に停滞、米国経済は予想以上に堅調
第一の点は、ほぼ予想どおりです。第二の点については、むしろ予想以上に、トランポノミクス(トランプ政権の経済政策)は滞っています。特に金融市場が好きな税制改革(主に法人税減税)は、遅くとも夏頃には何らかの形でまとまると見込まれました。ところが結局、年内の成立も微妙な情勢です。
米経済が堅調だという第三の点についても、予想以上でした。つまり、米国経済は足元、年率3%を超える成長率を記録し(図表2)、さらなる利上げも納得できる状況です。そして、米国株も好調です。
進歩した日本
以上のことから、次のことが推定されます。すなわち、トランポノミクスが滞っているにもかかわらず経済が好調、というより、それが滞っているからこそ経済が好調なのではないか、と言えるのです。
事実、トランプ氏の負の側面とされた反グローバリズムは、新規かつ具体的な政策としては、さほど実現していません。減税策も、富裕層に有利になるのは明白なので、実現すれば格差が広がるだけです。
米国離れのできない日本も、1年を経て、トランプ氏との距離の置き方を学びつつあるようです。今般の訪日でも、抑制気味の報道が目立ちました。大きな進歩です。昨年11月や今年2月の安倍・トランプ会談時には、トランプ大統領も案外良さそうだ、との楽観で、なぜか日本だけ盛り上がったのです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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