日本政治はどこに向かうのか?
残念なこと、良かったこと
衆院選で残念だったのは、重要な論点に関し議論が深まらなかったことです。ただ、良いことも起こりました。つまりアベノミクスを擁護する際に用いられる定番の言い訳が、使いにくくなったことです。
一つは、民主党(民進党)よりは「まし」というものです(実際は、民主党政権時の方が例えば個人消費は増えていたのですが(図表1))。しかし同党は今般分裂したため、その政権時代は人々の記憶から消えていくでしょう。よって、過去の「悪政」へ国民の目を逸らそうとしても、もう通用しません。
代替案は存在する
もう一つの定番は、アベノミクス批判者には「代替案がない」というものです(実際は、代替案など最初からいくらでもありました。例えば日銀の市場操作をやめる、というだけでも、有益な代替案です)。
唐突な衆院選は、表面的な政策論争に終始しました。それでも、消費税や原発といった主な論点では、様々な立場が表明されました。エネルギー問題について言えば、原発や化石燃料への依存を脱し、自然エネルギーへのシフトを進める、という主張は、賛否はさておき、代替案には違いありません。詳細が未定でも、代替案を否定する理由にはなりません。全てを政治に任せるのは、間違っているからです。
実は全部重要な「12のゼロ」
「原発ゼロ」については、希望の党の公約である「12のゼロ(図表2)」の筆頭に挙げられています。
これらの公約は、人間や動物の生き方を問う重要なものばかりです。例えば「満員電車ゼロ」は、通勤で疲弊する日本人は真に豊かと言えるか、という問題提起でしょう。しかしこれらへの反応は、冷めたものばかりです。そのこと自体が、本質的な思索を回避する、日本の浅薄な精神状況を示しています。
既成観念にとらわれない案が未来志向の代替案だとすれば、それらは確かに提示されているのです。「12のゼロ」はそうした案です。希望の党の凋落に伴い忘れ去られてしまうのは、あまりにも残念です。
保守とリベラル
果たして現政権は、言い訳や印象操作を慎み、代替案に対して謙虚に耳を傾けるようになるのでしょうか。そのような改心を疑う人が多いのは、昔ながらの自民一党支配がむしろ強まっているからです。
そのため最近、日本でも保守(中道右派)とリベラル(中道左派)の対立軸を形成することが急務、といった主張が聞かれます。現政権は一般に、「保守」と言われます。したがって権力の腐敗を防ぐには、リベラルとされる立憲民主党を軸とする野党勢力が拡大し、与党と対峙することが必須、と言われます。
政治の安定を喜んでいる場合なのか?
よく比較される米国では、保守の共和党、リベラルの民主党、と分類されます。とはいえ「自由」を重視する点では、ほぼ同じです。ただし、その実現方法で違いが生じます。経済面では、国家介入の極小化を目指すのが保守、累進課税による再分配などで弱者の自由を守ろうとするのが、リベラルです。
安倍政権は経済介入を好むので(日銀の市場操作など)、米国の基準では保守とは呼べません。また、弱者寄りではないので(物価高誘導など)、リベラルでもありません。こうした中途半端な性質は、野党との対立軸を薄め、政治の安定をもたらします。しかしその代償は、議論の欠如、経済活力の減退です。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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