謙虚なアベノミクスへ

2017/10/25

「謙虚」がキーワードに

衆院選の勝利には「謙虚に向き合い」、今後も「謙虚に全力を尽くす」と、首相は述べました。日本の美徳「謙虚さ」が復活するのでしょうか。それが本心だとすれば、政治や経済は、良い方向に進みます。

安倍氏が謙虚さをアピールするのは、当然のことです。おごり、慢心、汚職疑惑(本人は否定)への反感が、現政権を取り巻いているからです。人気は低迷しており(図表1)、衆院選の圧勝は、野党の分裂や失態のおかげにすぎません。念願の憲法改正も、広い合意を形成するには、謙虚に提案すべきです。

目標未達は明らか

肝心の経済を見ても、謙虚にならざるを得ません。5年近くにわたるアベノミクスという実験は、うまくいかなかったからです。目標が明らかに未達のとき、失敗だったと認めるのが、謙虚な態度です。

本来の目標は、2%の実質経済成長率、および、2%の物価上昇率でした。しかし結果は、成長率の平均は1%強(図表2)、物価上昇率は足元0%台です。そして、実質成長率の目標は、すっかり消えてしまいました。物価については、目標設定そのものが誤りだったと言うべきです。なお、失業率は下がりましたが、アベノミクスとは無関係です。また、株価については、もともと政策目標ではありません。

脱却すべきはデフレではなく、円安信仰

ただし、現実離れした高い物価目標は、円高を抑える役目を担っています。なぜなら、物価目標に届かない間はデフレ脱却と言えず、よってデフレ脱却のためには何をしてもよい、というのが日銀の姿勢であるからです。そうして正当化されたのが異次元緩和であり、それが円安を促すことがあったのです。

しかし円安が進んでも、日本経済はよみがえりません。それどころか通貨価値の下落は、それ以上に所得が増えない限り、一般の家計を害します。輸出企業についても、円安による見せかけの収益増で気が緩み、技術革新が遅れ、競争力が低下します。本当に脱却すべきは、日銀や市場の円安信仰でしょう。

日銀も謙虚になれるか?

よって日銀も、安倍氏に見習い、謙虚さを持つことが必要です。異次元緩和の欠陥を認め、物価目標を改めることです。何よりも、人々のマインドや市場を操作しようという、傲慢さを捨てることです。

ただ、逆に円高が急速に進んでも、経済は混乱します。とはいえ、今は世界経済が好調なので、金融市場は楽観ムードに包まれています。日銀への関心も低下しています。このため、日銀が異次元緩和を反省し、「出口」を宣言したとしても、それだけで円高・株安が一方的に進むとは考えにくいのです。

「傲慢なアベノミクス」の終わり

安倍政権や日銀が本当に謙虚な姿勢へ転じれば、それは、アベノミクスの根本的な変化を意味します。

アベノミクスとは、「期待に働きかける政策」でした。そのため期待を盛り上げようと、「1億総活躍社会」など、仰々しい標語が連発されました。そして、実質所得の減少など不都合な現実は、直視されませんでした。失敗はあり得ない、という傲慢な態度だったのです。しかし今、謙虚にならざるを得ない状況に、追い込まれました。アベノミクスとしても、人口減などに関し、謙虚に取り組む所存のようです。政権交代は起こりませんでしたが、政権内の基本的態度は、立派な変革を遂げるのでしょうか。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

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