ドイツ総選挙を受け、極右復活か?
既存勢力の失速
24日に実施されたドイツ総選挙(図表1)は、大きな「希望」とともに、若干の懸念を残しました。
第1党となったのは、予想どおり、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)です。そのため、これを率いるメルケル首相の続投は、確実となりました。ただ、改選前に比べ、獲得議席は少ないものにとどまりました。第2党の社会民主党(SPD)の議席も、改選前を大幅に下回りました。この二大勢力が失速したのに対し、躍進したと騒がれているのが、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」です。
極右台頭の意味
こうした結果は、ここ数年で顕著となった欧米政治の構図に、そのまま当てはまるように見えます。
つまり、長年にわたる支配政党が弱体化する一方、過激な排外主義を唱える極右が勢い付く、という構図です。安定を誇るドイツも、反グローバリズムや社会の分断と無関係でいられないのでしょうか。
AfDは、反イスラム、反難民、反ユーロなどを唱え、注目を集めました。「ドイツを取り戻す」をスローガンとするばかりか、「世界大戦時のドイツ兵の功績」を主張する幹部もいます。そんな極右が今回、戦後初めて議席を獲得したのです。ナチス時代を深く反省するドイツでは、たしかに衝撃的なことです。
本当に脅威なのか?
ただし、極右が勢いを増し、いずれAfDが政権を奪うかと言うと、その可能性はないと思われます。
「AfDの脅威」は、大げさな表現です。躍進したと言っても、今回の得票率(12.6%)は予想の範囲内でした。また、極右思想が積極的に支持されたというより、既存政党に失望した人の受け皿になった、というのが正確です(図表2)。AfDをナチスになぞらえるのも、適切とは言えません。ナチスを率いたアドルフ・ヒトラーが備えたような、恐るべき洗脳力を持つ思想を欠いているからです。そのため、AfDの力でドイツ国民が非合理的なナショナリズムに熱狂し陶酔するとは、全く考えられません。
3党連立への懸念
金融市場が懸念するのは、極右よりも、総選挙を受けた連立交渉の行方です。連立政権の一角だったSPDがその解消を宣言しているため、メルケル首相は、ほかの連立パターンを模索せざるを得ません。
特に、CDU/CSU、自由民主党(FDP)、緑の党(Greens)の3党連立です。ただ、各党の政策には隔たりがあるので、連立交渉は年末まで長引きそうです。気がかりなのは、欧州統合の行方でしょう。メルケル首相がその深化へ前向きになっている一方、FDPはこれに関し慎重な立場だからです。
改めてメルケル首相に期待
考え方の違う3党の連立となれば、ドイツの政治は不安定化を余儀なくされます。とはいえ多様な思想が競い合うのは、良いことです。また、AfDの台頭は、社会に不満を持つ人々がドイツにも存在するという現実を、白日の下にさらしました。これを真摯に受け止めれば、ドイツはさらに発展できます。
よってメルケル首相は、より包括的な幸福の向上を目指すでしょう。冷静沈着な同首相の続投は、日本にも好影響を与えると期待できます。各国の為政者は今、挑発合戦で熱くなっています。そうした攻撃性を中和する上で、同首相ほど頼れる人はほかにいません。そのことを、繰り返し強調すべきです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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