北朝鮮、ハリケーン、米国財政について
相次ぐ好材料
今週、金融市場のムードが一旦好転しました。幾つかの好材料を踏まえれば、納得してよい流れです。
まず、北朝鮮をめぐる動きが、(一部を除き)冷静になってきました。国連が今週決めた制裁措置も、石油の全面禁輸を見送るなど、理性的なものにとどまりました。また、中国も制裁に同意したので、米中関係が悪化するリスクも低下しました。一方の北朝鮮も、米国を本気で怒らせる覚悟はないでしょう。
次に、米国南部を襲った二つの巨大ハリケーン「ハービー」と「イルマ」についてです。これらのうち今週上陸した「イルマ」による洪水などの被害規模は、当初予想を大幅に下回りそうだというのです。
さらに、懸念されていた米国の財政麻痺(米国債の債務不履行や政府機能の一部停止)も、当面回避されそうです。3か月の期限付きながら連邦債務の上限が引き上げられ、暫定予算も成立したのです。
求められる「謙虚さ」
近年最大級とも言われた「イルマ」が大惨事に至らなかったのは、予想された進路から外れ、勢力も弱まったためです。結局、予測は当てになりません。良い方向へ予想が外れたのは、単なる幸運です。
ただし、全くなすすべがなかったわけではありません。フロリダ州では、「イルマ」上陸前に約600万人もの住民が避難を指示されました。そうした警戒態勢や周到な準備も、被害の抑制に役立ちました。
なお、ハリケーンと地球温暖化の関係は定かでありません。ただ、これだけの巨大ハリケーンが続くのは、極めて異例です。洪水も世界中で増えています(図表1)。確かなのは、自然界では人知を超えたことが無数に起こるということだけです。トランプ政権にも、環境問題への謙虚な態度が求められます。
失地回復?
とはいえ、迷走するトランプ政権にとって、ハリケーンは失地回復のきっかけとなるかもしれません。
財政麻痺を一旦回避できたのも、ハリケーンの救済基金を確保するという名目があったからです。特記すべきは、その措置がまずトランプ氏と野党・民主党との間で合意されたことです。同氏にも、野党と協調する用意があるということでしょう。これはトランプ政権に関し、かすかな希望を抱かせます。
トランプ氏の政策で意味があるのは、インフラ投資です。そして老朽化した交通施設などの再整備は、民主党も優先しています。よって同氏と民主党が協調すれば、そうした投資が加速するかもしれません。
楽観できるか?
ただし、逆に同氏と共和党の関係が悪化すれば、減税策などは小粒のものしか実現できないでしょう。また、財政問題では3か月後、ハリケーンという言い訳なしに超党派の妥協を図らねばなりません。
ハリケーン被害については、過去の例から言っても(図表2)、米国全体への影響は一時的と見込まれます。ただ、過去との単純な比較はできないので、被害の程度および復興のペースは、不確実です。被災地に限れば、企業活動の途絶やインフラの破壊を通じ、生産や雇用に相応の影響を与えるはずです。
つまり、米国や世界の不確実性はなくなりません。むろん北朝鮮についても、本心は金正恩氏たちしかわかりません。よって、市場心理の改善には理由があるものの、楽観視はできません。投資家など市場参加者に求められるのは、やはり謙虚さです。相場の動きは、自然現象以上に予測が難しいからです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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