BRICSサミットと北朝鮮問題
BRICSの狙い
北朝鮮の暴挙も含め、いま世界中で生じている動きの多くは、既存の国際秩序への挑戦と言えます。
ただし、中には正当な挑戦もあります。特に、先進国中心の戦後秩序に対する、新興国の自己主張です。それを象徴するBRICSサミット(ブリックス首脳会議)が、今週、中国にて開催されました。
BRICSとは、代表的な新興国であるブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの5か国です。そのサミットは2009年に始まりました。狙いは、経済協力などを通じた新興諸国の発言力向上です。
根強い懐疑
BRICSの結束力には、懐疑的な見方が根強くあります。これら5か国には、自由や人権といった共通の価値観があまりないからです。インドは民主政、中国は一党独裁という具合に、政体も様々です。
経済構造や成長率(図表1)の点でも、BRICSと一括するのは本来無理があります。例えば中国が製造業主体で発展したのに対し、ブラジル、ロシア、南アフリカは資源国です。そしてインドや中国が成長を続けている一方、ブラジルとロシアは、一昨年と昨年、資源安などのため不況に陥りました。
結束は案外強固
しかし、これほど不自然なまとまりであるにもかかわらず、BRICSの団結意思は衰えていません。5か国が出資する新開発銀行(NDB、2015年に発足)という形で、具体的な実績もあげています。
また、インドと中国についてはインド北東部の国境をめぐり、両軍がにらみ合うという緊張状態にありました。しかし今回のサミットを成功させるべく、先週、双方が一旦撤退することで合意したのです。BRICSの結束は、少なくとも先進国の人が考えるよりは、はるかに強固とみた方がよさそうです。
チャンス到来
結束の原動力は何か。やはり、長年の米欧支配を打破したいという一心でしょう。それを勢い付けたのが、米欧が震源地の金融危機です。米欧が誇った経済の仕組みは、実は脆弱だと暴露されたのです。
そして現在、中国やロシアは、絶好のチャンス到来とみているはずです。反グローバリズム寄りの偏狭な主張を、米国の大統領などが行っているからです。このチャンスを、逃すはずはありません。実際、今回のサミットも、BRICSの理想は開放性と包括性だと表明し、米国第一主義を暗に非難しました。
北朝鮮問題への現実的な反応
その偽善を指摘するのは簡単です。例えば中国市場は、まだ十分に開放されていません。とはいえ、経済や外交に限らずあらゆる公的場面では、理想や建前も(偽善だとしても)無意味ではありません。
問題の北朝鮮に関しても、核不拡散という理想を、国際社会は掲げ続けるべきでしょう。ただし、核保有国(図表2)の偽善または身勝手との面は消えません。また、インドなどへの拡散は既成事実です。
理想と現実の狭間で、BRICS(北朝鮮との対話重視)と米国(強硬路線)の足並みも揃いません。結局、他国の人命を奪ったりしない限り、核やミサイルの実験を武力で阻止するのは、極めて困難です。
金融市場は、そうした現実を受け入れつつあるようです。北朝鮮の核開発は、もちろん日本には脅威でしょう。しかし現実主義に徹する市場の材料としては、次第に影響力を弱めていくと見込まれます。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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