金融政策に関する正しい理解
力強い世界経済を促進できるか?
金融政策は、依然として重要な使命を帯びています。しかし、その限界も認識せねばなりません。
米国にて先週末、主要な中央銀行の高官、学者らによる会合が行われました(ジャクソンホール会合)。毎年この時期に開かれる会合ですが、今年のテーマは「力強い世界経済を促進する」というものでした。
このテーマのもとで主に強調されたのは、保護主義(自由貿易の制限)は望ましくないということ、および金融規制の大幅な緩和には慎重であるべきということ、の二点です。いずれも的確な指摘です。ただ、通商政策を決めるのは中央銀行ではなく、政府・議会です。また、金融規制については基本的に現状を維持すべきということなので、それだけで「力強い世界経済を促進」できるとは考えられません。
金融政策の役割と限界
その程度の指摘にとどまったということ自体が、金融政策の限界を示しています。それを担う中央銀行のトップが集まった会合で、世界経済の底上げに関し、画期的な策を何も打ち出せなかったのです。
とはいえ、それは当然です。そもそも金融政策の役割は、さほど多くないからです。経済の過熱時には政策金利を引き上げ、後退局面ではそれを引き下げる。平常時には、それらにほぼ限定されます。ただ、経済危機時には、量的緩和(中央銀行による資産買入れ)という奇策も、一時的に許容されます。
金利の上げ下げや量的緩和は、経済活動や金融市場の過度な振幅を抑える点では、有効な場合があります。しかし力強い世界経済を(持続的に)促進するために必要なのは、程良い人口増加、科学技術の進歩、友好的な国際関係などです。どれに関しても、中央銀行が直接貢献できる部分はごくわずかです。
米欧の緩和縮小は適切
米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)は、そのような金融緩和の限界をよく理解しています。また、米欧の経済は低成長ながらも回復中なので、極端な金融緩和の妥当性が薄れています。逆にこれ以上の緩和は、プラス効果よりも弊害(市場機能の破壊など)を大きくしかねません。
そのため、FRBは今年中にもう一度、利上げを行おうとしています。ECBについても、来年1月から量的緩和を縮小し始めることに、前向きのようです。これらは、景気回復という事実、および正しい理解(持続的な経済成長に関し、異例の金融緩和は非力または有害)に基づく、適切な判断でしょう。
金融政策に関する日銀の誤解
日本はどうでしょうか。まず事実を言えば、足元の景気回復ペースは、米欧にも引けを取りません。
しかし、日銀の理解と判断が正しくありません。一番の誤解は、景気のさらなる拡大には円安と年2%のインフレが必須、というものです。そのため、異常な金融緩和策(図表1)を改めるという、適切な判断を行えません(金融緩和が円安とインフレをもたらすとの既成観念にも、議論の余地があります)。
通貨安がむしろ障害になることは、最近の英国が示しています。ポンド安でインフレが進み、実質購買力が低下したため、景気が減速したのです(図表2)。日銀は、それらに学ぶべきでしょう。そして景気後退局面でも経済危機でもないのに異次元緩和を続けるという、非論理的な状況から脱するべきです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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