マクロン大統領の挑戦とフランス革命の精神
フランス革命とは
近代以降の世界史で最も重要な出来事は、二度の世界大戦です。次に重要なのは何かと問えば諸説あり得ますが、民主主義の理念を最も劇的な形で現実化したフランス革命こそ、その筆頭候補でしょう。
1789年7月14日、パリのバスティーユにあった牢獄を、興奮した民衆が襲撃しました。王政に逆らった政治犯が収容されていると思われていたためです。これを発端とするフランス革命の意義は、王や貴族、教会の「特権」を廃し、人間の自由と平等を力強く宣言したところにあります。残念ながら暴力行為も伴いました。しかし長い目で見て、世界を民主化方向へ導いた点は、やはり偉大です。
フランスと米国の和解?
この革命は、現在もフランス国民にとって大きな意味を有しています。そのためバスティーユ・デイ(フランス革命記念日)の毎年7月14日には、共和国成立を祝う行事(パリ祭)が盛大に行われます。
今年のパリ祭にあたり、フランスのマクロン大統領は米国のトランプ大統領を招待しました。第一次世界大戦において米国がフランスや英国の陣営に加わった年から数えて、100周年を迎えたためです。
最近の欧米関係は良好とは言えませんが、トランプ氏は、マクロン氏の招待に快く応じました。そしてシャンゼリゼ通りでの軍事パレードを、マクロン氏のとなりで嬉しそうに参観しました。
困難な改革に挑むマクロン大統領
気候変動や貿易の面では、マクロン氏はトランプ氏を正面から鋭く批判しています。にもかかわらずトランプ氏をパリ祭へ招待したのは、硬軟両方の姿勢を使い分ける、マクロン氏の非凡さの表れです。
ただし、勢いに乗るマクロン氏の挑戦も、これから厳しい局面を強いられます。期待されるのは、伸び悩むフランス経済の立て直しです。しかし雇用の改善、財政の健全化、生産性の向上といった改革は、どれも決して容易ではありません。改革を強引に進めれば、反発する人が必ず出てきます。
たとえば生産性向上のため人工知能(AI)を活用すれば、それにより職を失う知的労働者もいるはずです。不満が高じれば、極右や急進左派の躍進に道を開くでしょう。また、緊縮反対派に屈して財政再建に失敗すれば、ドイツからの信用を失い、独仏協調を前提とする欧州統合は再び迷走するでしょう。
いま求められるフランス革命の精神
しかし世界史では、不可能に見えることが時として奇跡的に起こり、他国にも多大な影響を与えます。
まさしく奇跡に近いことを成し遂げたのが、フランス革命です。神が定めた盤石の体制と信じられていた絶対王政を、民衆の力で倒したのです。あらゆる権威や権力は永遠不滅のものではないこと、社会の仕組みは変えられるということ、これらを実証し、それ以降、世界中の民主化運動を鼓舞したのです。
マクロン氏の挑戦も、成功すれば他国が参照すべきモデルとなり得ます。日本や米国では、改革が一向に進みません。先進国でも、有力な政治家とその「友達」、一部の企業やメディア、超富裕層などにとって心地よい秩序が固着しています。そうした既得権益を打破するのは、ほぼ不可能なのでしょうか。
それでもフランスには、希望を託さずにはいられません。本当にあの革命を誇りにしているのであれば、その原点である「特権の否定」に立ち返り、より自由で公平な経済社会を築いて欲しいものです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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