欧州の本当の姿とは?

2017/07/06 <>

欧州3か国を往訪

6月下旬から、英仏伊の3か国へ赴きました。欧州の事情は実に複雑、というのが素直な感想です。

それでも現地の市場関係者の間では、似た意見が確認されました。つまり、英国の政治・経済にはネガティブな見通しが支配的です。一方、ユーロ圏についてはポジティブなムードが醸成されています。ユーロ圏の経済成長率は1-3月期に英国を上回りましたが、一時的な逆転ではなさそうです。

英国 - メイ氏への失望とコービン氏への恐怖

英国では、やはりブレグジット(欧州連合(EU)からの離脱)や政局をめぐる不透明感が、重くのしかかっています。それに拍車をかけているのが、6月の総選挙(与党・保守党が過半数割れ)です。

ブレグジットや総選挙は、英国の市場参加者の目には「非常に愚かなこと」と映っています。たしかに経済のみの観点に立てば、ブレグジットに伴う不利益が想定されます。また、メイ首相への信頼が失墜した今、「共産主義者」とも言われるコービン氏が率いる労働党の躍進を、多くの人が恐れています。

フランス - マクロン政権へのバランスのとれた見方

一方、明るさの感じられるのがフランスです。親EUのマクロン大統領が誕生した上、同大統領の率いる「共和国前進」が6月の議会選で圧勝したからです。市場が期待するのは、「企業寄り」の政策です。

企業寄りの新政権を市場が持て囃すのは、日本の安倍政権発足時(2012年末)や米国の大統領選後(昨年秋から)にも見られました。ただ、アベノミクスやトランポノミクスの場合とは違い、フランスは浮かれた様子ではありません。雇用規制改革の難しさなどを、誰もが知っているからです。メディアも早速、新政権に対し辛辣な批評を行っています。このあたりは、フランス民主主義の健全な部分です。

イタリア - 政治・経済の最悪期は過ぎつつある模様

ユーロ圏主要国のうち、景気回復に最も遅れているのがイタリアです。失業率も高く、特に若年層は深刻な就職難とのことです。また、経営危機にある銀行の公的救済が、ようやく進捗し始めた段階です。

とはいえ、EU統合に対するフランスなどの前向きな姿勢は、イタリアの政治・経済にも好影響を与えています。実際、EUに懐疑的な政党「五つ星運動」の勢いは、もうピークを過ぎたと見られています。そして、中道寄りの政権下で政治の安定感が増す、といった楽観論が聞かれました。また、イタリアへ押し寄せる北アフリカからの難民には、EUが結束して対処しようとの機運が高まりつつあります。

欧州の悩みは尽きない

このように、各国の状況は異なります。ただ、今般往訪したロンドン、パリ、ローマの中心部に限れば、いずれも重厚かつ華やかで、感嘆の念に打たれます。もっとも、街に活気を与えているのは、主に外国人観光客です。一般的な住民の生活レベルは向上していません。また、地下鉄などインフラの質は、決して高くありません。そして、テロを想起させる場面にも遭遇します。あるいは移民・難民の多い地区へ行くと、情景が劇的に変化します。それは、矛盾とリスクに満ちた社会です。

しかし、人々はテロなどにひるまず、普段どおりの生活や娯楽を続けています(それがテロへの対抗手段だそうです)。おそらくこれとは違った理由ですが、金融市場も、多くの社会矛盾やリスクに対し無感覚になっているようです。ただし、欧州の実相を垣間見ただけでも、その悩みの深さがわかるのです。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会