欧州の本当の姿とは?
欧州3か国を往訪
6月下旬から、英仏伊の3か国へ赴きました。欧州の事情は実に複雑、というのが素直な感想です。
それでも現地の市場関係者の間では、似た意見が確認されました。つまり、英国の政治・経済にはネガティブな見通しが支配的です。一方、ユーロ圏についてはポジティブなムードが醸成されています。ユーロ圏の経済成長率は1-3月期に英国を上回りましたが、一時的な逆転ではなさそうです。
英国 - メイ氏への失望とコービン氏への恐怖
英国では、やはりブレグジット(欧州連合(EU)からの離脱)や政局をめぐる不透明感が、重くのしかかっています。それに拍車をかけているのが、6月の総選挙(与党・保守党が過半数割れ)です。
ブレグジットや総選挙は、英国の市場参加者の目には「非常に愚かなこと」と映っています。たしかに経済のみの観点に立てば、ブレグジットに伴う不利益が想定されます。また、メイ首相への信頼が失墜した今、「共産主義者」とも言われるコービン氏が率いる労働党の躍進を、多くの人が恐れています。
フランス - マクロン政権へのバランスのとれた見方
一方、明るさの感じられるのがフランスです。親EUのマクロン大統領が誕生した上、同大統領の率いる「共和国前進」が6月の議会選で圧勝したからです。市場が期待するのは、「企業寄り」の政策です。
企業寄りの新政権を市場が持て囃すのは、日本の安倍政権発足時(2012年末)や米国の大統領選後(昨年秋から)にも見られました。ただ、アベノミクスやトランポノミクスの場合とは違い、フランスは浮かれた様子ではありません。雇用規制改革の難しさなどを、誰もが知っているからです。メディアも早速、新政権に対し辛辣な批評を行っています。このあたりは、フランス民主主義の健全な部分です。
イタリア - 政治・経済の最悪期は過ぎつつある模様
ユーロ圏主要国のうち、景気回復に最も遅れているのがイタリアです。失業率も高く、特に若年層は深刻な就職難とのことです。また、経営危機にある銀行の公的救済が、ようやく進捗し始めた段階です。
とはいえ、EU統合に対するフランスなどの前向きな姿勢は、イタリアの政治・経済にも好影響を与えています。実際、EUに懐疑的な政党「五つ星運動」の勢いは、もうピークを過ぎたと見られています。そして、中道寄りの政権下で政治の安定感が増す、といった楽観論が聞かれました。また、イタリアへ押し寄せる北アフリカからの難民には、EUが結束して対処しようとの機運が高まりつつあります。
欧州の悩みは尽きない
このように、各国の状況は異なります。ただ、今般往訪したロンドン、パリ、ローマの中心部に限れば、いずれも重厚かつ華やかで、感嘆の念に打たれます。もっとも、街に活気を与えているのは、主に外国人観光客です。一般的な住民の生活レベルは向上していません。また、地下鉄などインフラの質は、決して高くありません。そして、テロを想起させる場面にも遭遇します。あるいは移民・難民の多い地区へ行くと、情景が劇的に変化します。それは、矛盾とリスクに満ちた社会です。
しかし、人々はテロなどにひるまず、普段どおりの生活や娯楽を続けています(それがテロへの対抗手段だそうです)。おそらくこれとは違った理由ですが、金融市場も、多くの社会矛盾やリスクに対し無感覚になっているようです。ただし、欧州の実相を垣間見ただけでも、その悩みの深さがわかるのです。
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