ユーロ圏の大きな前進
フランスを再評価
改革への期待で、フランスが盛り上がってきました。世界は、これをもっと歓迎してよいでしょう。
先月にはエマニュエル・マクロン氏という、若さあふれる大統領が就任しました。さらに今月11日の議会選(第1回投票)では、同氏の「共和国前進」が驚くべき強さを見せました。決着は18日の決選投票を待たねばなりませんが、この新党が議席の過半数を制するのは、間違いなさそうです。
こうした劇的な展開は、わずか1年ほど前には全く予想できませんでした。フランスの活力を再評価せざるを得ません。国内景気の停滞や既存政治の腐敗に嫌気が差した、有権者の力強い反乱と言えます。
気がかりな点もあるが
ただし、国民が一致団結しているわけではありません。11日の投票率は50%弱でした。フランスにはシニカルな人も多く、そうした人が政治の新潮流から距離を置こうとするのは、無理もありません。
また、「共和国前進」の候補者のうち約半分は政治経験がなく、手腕は未知数です。それでもこの新党が議会選で圧勝しそうなのは、国民の切実な改革期待に加え、マクロン氏個人の魅力にも負っています。
しかし、マクロン政権が優先する課題は、国内の労働市場改革です。解雇規制の緩和などにより、雇用の流動化を促すものです。硬直した雇用慣行を打破し、若年層が活躍する場を広げるには、必要な改革なのでしょうか。企業寄りの改革なので、金融市場も好感するでしょう。とはいえ、それを強引に進めれば、労働組合や一部メディアなどが反発します。そうなれば、マクロン人気は急落しかねません。
欧州統合への前進
それらにもかかわらず、フランス、そしてユーロ圏の大きな「前進」を、過小評価すべきではありません。ユーロ圏の株価や通貨は今年に入り堅調ですが、さらに上昇しても違和感はありません。
すなわち、欧州最大のリスクは、経済の停滞や移民の増加などを背景に、偏狭なナショナリズム勢力が主導権を握ることでした。そしてユーロ圏からの脱退国が相次ぎ、この通貨圏が分裂することでした。
しかし、あれだけ騒がれた欧州極右は、急失速しています。フランス議会選では、極右「国民戦線」の議席数が一桁にとどまりそうです。一方のマクロン氏は、ユーロ圏の共通予算などを主張する、欧州統合派です。フランスが数年以内に欧州連合(EU)やユーロ圏を脱退する可能性は、ほぼ消えました。
世界経済の未来は暗くない
もちろん欧州統合の成否は、フランスとドイツが結束できるか否かにかかっています。そのドイツはこれまで、ユーロ圏の共通予算などには後ろ向きでした(ドイツの財政負担が増えると考えられるため)。
ただ、ドイツのメルケル首相は最近、欧州統合に関し、より前向きになっています。米国の暴走や英国の迷走、中国の躍進を目にし、欧州大陸の団結が急務と認識したのでしょう。そしてメルケル氏は、9月の総選挙を経て、首相職続投となりそうです。マクロン氏とメルケル氏がユーロ圏の二大国を代表しているのは、本当に心強いことです。両氏は、自由で開かれた民主主義の強力な擁護者であるからです。
日米だけを見ていると、輝ける未来を描くのは困難を伴います。しかしアジアの発展に加え、ユーロ圏の前進という良いニュースもあるのです。よって今後の世界経済を、悲観し過ぎる必要はありません。
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