G7サミットに見る欧米と日本の事情

2017/05/31 <>

過去1年の素晴らしい実績

先週末、イタリアのシチリア島において、先進7か国首脳会議(G7サミット)が開かれました。

G7と言えば、ちょうど1年前の伊勢志摩サミットが想起されます。そのとき他国の首脳を驚かせたのは、安倍首相が当時と「リーマンショック前」との類似点を挙げ、危機への備えを呼びかけたことです。

しかし金融市場は、そのような発言を気に留めませんでした。この1年間で、米国や日本の株価指数は約17~18%も上昇したのです。世界の実体経済が安定感を増したのも、この1年間です。

波乱のサミット

ただし、今年のサミットは、経済が安定する中で開かれたにもかかわらず、波乱の舞台となりました。

世界的な関心も、昨年をはるかに上回りました。それは、7人の首脳のうち4人(米、英、仏、伊)が初参加という新鮮さによるものです。中でも注目を集めたのは、もちろん米国のトランプ大統領です。

同大統領は、G7サミット直前の中東訪問では、落ち着いた態度も見せました。しかしサミットでは、普段の攻撃的な米国第一主義を示したのです。これは米国と欧州の関係に、大きな禍根を残すでしょう。

パリ協定をめぐる欧米の対立

特に米国の孤立を印象づけたのは、「パリ協定」の意義に関し、米国だけが懐疑的であることです。

2015年に採択されたこの協定は、地球温暖化対策に向けた画期的な枠組みです。主導したのは、米国のオバマ前大統領でした。その米国が、新大統領のもとで協定離脱すら示唆しているのです。国内の化石燃料産業を保護するためですが、米国の無責任さが他国の反発を呼ぶのは全く当然です。

そうした米国の姿勢には、ドイツのメルケル首相が強い不満を表わしています。同首相はもともと物理学者です。温暖化説は「ウソ」と信じるトランプ氏の反科学的な態度を、到底容認できないはずです。

ユーロ圏の自信と米国への失望

米国は、結局は条件付きでパリ協定に残留すると予想されます。しかし、欧米の亀裂は今や明白です。

トランプ氏は、民主国からなるG7の会議時に比べ、独裁的な中東諸国での滞在時、よほどリラックスできるようでした。そのような印象の積み重ねは、民主主義の担い手という米国の評判を傷つけます。

一方、欧州では民主主義への信念が堅固で、極右運動も鈍っています。経済も全体では回復基調です。それらを背景に、ユーロ圏は自信を取り戻しつつあります。G7サミットの後、欧州大陸が米英に頼る時代は終わるかもしれない、とメルケル氏が示唆したのは、そうした自信と米国への失望の発露でしょう。

日本の立場と影響は?

欧米が率直な意見を戦わせる中、日本は、今年のサミットではあまり存在感を示せませんでした。

その点は、やむを得ないのかもしれません。日本は、欧米を見事に仲裁できるほどには重んじられる立場にないからです。さらに現政権は現在、数々の疑惑に揺れています(複数の学園との関係など)。健全な民主主義国であるならば、今はサミットよりも国内の疑惑解明に注力する、となって当然です。

なお、日本の政局が泥沼化しても、金融市場への悪影響は限られそうです。世界の主役は欧米、中国、ロシアであり、首相の発言を含め、日本の政治・経済は相場の材料になりにくくなっているからです。

 

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