トランプ氏の苦境と金融市場
その命運はいかに
米大統領選挙でトランプ氏が勝利して、半年以上になります。そして今、同氏は最大の試練に直面しているように見えます。同氏らとロシアの関係をめぐる疑惑が、危機的局面へ発展しつつあるからです。
ただ、決定的な証拠が出てこない限り、トランプ大統領が議会により弾劾(罷免)されるとは考えにくいでしょう。議会の多数派である共和党の議員は、一部の人を除き、同じ党のトランプ氏に公然と反旗を翻す勇気を欠いているからです。普通の政治家が党派と保身を優先するのは、どの国でも同じです。
トランプ外交の危うさ
国内が騒然とする中、トランプ大統領は、就任後初めての外国訪問を行っています(20日~27日)。
最初の訪問先となったサウジアラビアは、イスラム教スンニ派の盟主を自認する国です。トランプ氏は「イスラム嫌い」と見られていますが、そういったイメージを和らげようという意図もあるようです。
しかし、イスラム教にはシーア派という宗派もあって、中心はイランです。そしてトランプ氏は今回、アラブ諸国とイスラエルの結束を呼びかけるにあたり、「イランの脅威」を強調しました。共通の敵を設けるのは同氏の好む手法ですが、これはむやみに「敵」との不和をあおる点で、大きな危険を伴います。
むしろ反ポピュリズム
国内でもトランプ氏は、「敵」を設定していました。すなわちエスタブリッシュメント(支配階層)です。ところが一層鮮明になってきたのは、同氏が支配階層側にすっかり取り込まれていることです。
昨日には、2018年度の予算教書(大統領の予算方針)が発表されました。ここで顕著なのは、低所得層向け支援のカットです。一方で現政権は、富裕層にメリットが片寄る大型減税を目指しています。
トランプ氏は、ポピュリズム(大衆迎合主義あるいは人民主義)の象徴と言われます。しかし実際には、逆にエスタブリッシュメントへ迎合する政策が色濃くなっているのです(その実現性は別の問題)。
支持層は離反するのか
つまり、白人の低所得層など、トランプ大統領誕生の原動力となった人から見ると、裏切り行為と言うべきことが行われています。それでもトランプ氏のコアな支持者は、さほど同氏から離反していないようです。共和党議員が反トランプへ踏み切ることができないのは、そうした事情もあります。
熱心な支持者がトランプ氏を信じ続けるのは、特に意外なことではありません。そのことは、日本でアベノミクスを礼賛していた人が、その政策の多くは期待外れだったと認められないのと似ています。
市場は「トランプ離れ」
とはいえトランプ氏らの大言壮語が内容を伴わないことは、多くの人が知っています。このため、悪役に指名されたイランの反発は比較的冷静です。また、予算教書への市場の反応も、総じて冷やかです。
金融市場の「トランプ離れ」などで、米ドルはもう下落しつつあります。株価は堅調ですが、良好な世界景気の反映と言えます。そのためトランプ氏の命運を問わず、市場の混乱は一時的でしょう。
そもそも市場のトランプ期待には、強固な根拠がありませんでした。つまり市場は、それほど深く考えていません。よって新しい好材料(後任大統領への期待?)を見つけ、喜んでそれに乗じるはずです。
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