現代版シルクロードの問題と魅力

2017/05/17 <>

中国の世紀?

今世紀は、「中国の世紀」となるのでしょうか。偏見は捨てて、この問いに向き合うことが必要です。

先日、中国主導の「一帯一路」に関し、初の国際会議が北京で開かれました。アジアと欧州などを陸と海の交通網などで結び、貿易や投資を活性化しようという巨大経済圏構想です。会議には29か国の首脳級、130か国以上の代表のほか、国連事務総長なども参加し、高い関心が示されました。

一帯一路は、古代中国と西洋をつないだ交易路の名を借り、「現代版シルクロード」とも称されます。その壮大な構想からは、中国がかつて誇った栄華を取り戻そうという、希望と野心が見てとれます。

基本的な構想と目的は適切

しかし一路一帯は、紆余曲折をたどるでしょう。域内の多くは僻地なので、採算に乗る投資案件がどれだけあるか、との問題もあります。また、中国の覇権を警戒する国も少なくありません(インドなど)。

それでもシルクロードと聞けば、歴史ロマンをかき立てられます。スケールの大きさにおいても、この構想を超えるものは表れないでしょう(宇宙へ広げれば別ですが)。また、グローバル化に沿っており、完全に否定するのは困難です。相互交流による「繁栄と平和」という目的も、それ自体は適切です。

繁栄と平和への新たな道になるのか

ただ、中国に主導される世界で、本当に人権や民主主義が守られるのか、という懸念はもっともです。

しかし、価値観を押しつけ過ぎる面もあった欧米主導の世界では、平和が訪れませんでした。他方、一帯一路は、イデオロギー(政治思想)を問わず幅広い国が協力しよう、との考え方です。たしかに、それを通じて交易関係が深まれば、繁栄と平和が得られるかもしれません。その結果、人権や民主主義が広がる可能性もあるでしょう。そういった順序が成り立つのか、試すべきときが来たのでしょうか。

トランプ大統領が中国の拡大を後押し

米国は、トランプ大統領のもとで、そのような「中国方式」の拡大を期せずして後押ししています。

人権など中国の嫌う点を出さず、主に商売の見地から判断するトランプ氏は、明らかに中国と相性が合うのです。実際、4月の首脳会談で友好関係が示された後も、同氏は習主席をさかんに褒めています。

先週には、中国が米国産牛肉の輸入などを促すプランが合意されました。同時に米国は、一帯一路を高く評価する方針に転じました。オバマ前政権に比べ、現政権は中国覇権への警戒心が薄いようです。

歴史の必然なのか

米国が中国に対し友好姿勢へ変化している理由の一つとして、北朝鮮問題を挙げてもよいでしょう。

北朝鮮問題(米国に届く弾道ミサイルの開発など)に関し、多数の米国人が望んでいるのは、中国を通じた解決です。経済制裁にしても、北朝鮮の貿易のうち8割以上は対中国なので、中国の協力が欠かせません。北朝鮮を口実に米中関係や日中関係が改善するとすれば、結果的には良いことです。

トランプ大統領誕生にせよ北朝鮮問題にせよ、最近の事象は、なぜか中国の追い風となります。「中国の世紀」は必然なのでしょうか。少なくとも日本政府は、その認識へ傾いているように見えます。一帯一路やアジアインフラ投資銀行(AIIB)への協力・参加に意欲を見せているのは、その表れでしょう。

 

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