フランス大統領選挙の争点
第1回投票の結果と決選投票の見通し
フランスの大統領選挙は、金融市場やリベラルな民主派を、一息つかせる展開となっています。
23日の第1回投票で、中道・無党派のエマニュエル・マクロン氏が第1位となったのです。同氏、並びに第2位の極右、マリーヌ・ルペン氏が5月7日の決選投票に進み、国民の判断を仰ぎます。
決選では、マクロン氏が優位でしょう。ルペン氏は反欧州連合(EU)、反グローバル化、移民排斥などを掲げているため、過激さを嫌う人々が、消去法的にマクロン氏へ票を投じると考えられるからです。
流れは変わるか?
第1回投票の結果は、昨年から続く欧米政治の不穏な流れを押しとどめた、と評価できるでしょう。
昨年、ブレグジット(英国のEU離脱)という選択、そして米国のトランプ旋風は、欧米の不確実性を劇的に高めました。いずれも大半の予想に反したからです。他方、今回の結果は予想の範囲内でした。予見可能性の復活、と言ってよいでしょう。これは、企業の経済活動や金融市場にとって、好材料です。
より重要なこととして、世界的な極右台頭と他国排斥の流れが、ようやく阻まれるかもしれません。
マクロン氏の「希望」
流れに立ち向かい、あえて親EUや移民への寛容さを示しているのが、マクロン氏です。労働規制の緩和など企業寄りの政策も訴えているので、ポピュリズム(大衆迎合主義)とも一線を画しています。
また、マクロン氏は、中道派である旨をアピールしています。右か左か、という単純化は社会の分断をもたらすからでしょう。さらに、熱のこもった演説では、未来志向の「希望」を前面に出しています。
それらは、米国のあの人物を彷彿とさせます。すなわちマクロン氏は、オバマ氏の影響を受けているのでしょう。実際、両氏は先週の電話会談で、プログレッシブ(革新的)な諸価値を確認し合いました。
ルペン陣営の顔ぶれ
一方、ルペン氏と相性が良いのは、ロシアのプーチン大統領、および米国のトランプ大統領などです。
特にプーチン氏とは3月に友好的な会談を行うなど、ルペン氏の親ロシア姿勢は鮮明です。そして、「ロシア封じ込め」の狙いが残る北大西洋条約機構(NATO)からのフランス脱退を主張しています。そのため、もしもルペン氏が大統領になったら、経済と軍事の両面で、欧州の秩序が動揺するでしょう。
なお、トランプ氏は最近、NATO支持に転じました。これに対しルペン氏は、「自分は考えを変えない」と言っています。信念がある分、他国の首脳にとっては、ルペン氏の方が手ごわい相手でしょう。
決選投票で問われるもの
フランスでは、若年層を中心に失業率は高いままです。世界への影響力も、かつてほどではありません。そうした苦境の中で、国民の多くは、次の大統領が政治を立て直すのを待ち望んでいます。
問われているのは結局、「フランスらしさ」とは何か、です。マクロン氏は、開放性や多様性こそフランスらしさ、との思想に立ちます。一方ルペン氏は、閉鎖性こそがフランス文明を保護する、と考えます。よって決選投票でマクロン氏が勝てば、「親EU派の反EU派に対する勝利」にとどまりません。それは、国柄を大切にしつつも偏狭な国粋主義は拒否する、日本を含む世界の中道派を鼓舞するでしょう。
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