世界の危機が迫っているのか?
米国が世界の混乱を招く
米国のトランプ政権が内政、外交で迷走する中、世界情勢が不安定になるのは、ほぼ必然です。最近も、不穏な出来事が世界中で起こっています。それらは、世界に破滅をもたらす危機なのでしょうか。
米中の対立はひとまず緩和
世界経済に関し一番のリスクは、米中の貿易摩擦が激化することです。そのために注目されたのが先週末の米中首脳会談ですが、結局は友好ムードが醸し出されました。世界にとって、良いニュースです。
また、中国を為替操作国に、というトランプ氏の公約は、ひとまず撤回されたようです。人民元相場は下落しているものの、中国はこれを抑えようとしているのが現実だからでしょう。それは、外貨準備高が2年で1兆ドル近く減ったこと(ドル売り・人民元買いによる)からも明らかです。トランプ氏は、このことを人から教わったのでしょう。同氏にも、素直に学ぶ姿勢があるということです。
北朝鮮への攻撃は考えにくい
しかし「中国を叩くトランプ」を期待する強硬派が、米国には(日本にも?)少なくありません。まさに米中首脳会談の最中、米軍がシリアを爆撃しましたが、中国への牽制という意図もあったようです。
ただ、この爆撃が、挑発を続ける北朝鮮や、その同盟国である中国への脅迫や牽制になるかというと、効果は小さいでしょう。北朝鮮への先制攻撃も辞さずという米国の本気度は、疑わしいからです。北朝鮮は、米軍に攻撃されれば激しく報復するでしょう。その覚悟は、米国には(もちろん韓国や日本にも)まだないようです。もし米国が本気であるならば、韓国や日本にいる米国人をまず避難させるはずです。
シリア爆撃の後、トランプ大統領も慎重に
シリアへの攻撃については、おそらく北朝鮮問題がなくても実行されたでしょう。また、トランプ氏以外の人が大統領だったとしても実行されたでしょう。今回は多くの議員、世論、メディアが、攻撃ムードを助長していたからです。しかし問題は、シリアには介入しないという、トランプ氏の従来の主張と矛盾することです。原則ではなく感覚で軍事行動を決断するという、同氏の危うさが示されたのです。
明確な原則がない以上、懸念されるのは、政権支持率を上げるために武力行使を、との誘惑に駆られないかです。米国では紛争や危機の後、支持率が跳ね上がることがあるためです(図表2)。ただ、この点で少し安堵できる事実があります。シリア爆撃の後も、支持率はあまり上がっていないのです。これらを踏まえると、2回目のシリア爆撃や北朝鮮への攻撃には、安易に踏み切れないでしょう。
本当の危機には遠い
ただし、シリアのアサド政権を支援するロシアと米国との関係改善は、一段と難しくなりました。
米国とロシアの関係に比べれば、米中の場合には、相互の歩み寄りがはるかに容易です。中国は、もともと市場開放を徐々に進める方向です。そして、たとえば米国から農産物の輸入を増やすでしょう。これは、米国の農業やトランプ氏だけでなく、将来の食料不足が懸念される中国の国民にも朗報です。
つまり世界は、経済的にも軍事的にも、危機の瀬戸際とはまだ言えません。第一、本当の危機に面していれば、以上のように至って客観的な視点から、冷静な文章を書いている場合ではなくなるでしょう。
印刷用PDFはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会