中国経済と世界新秩序
全人代が開幕
中国では今、全国人民代表大会(全人代)が開かれています。国会に一応相当し、年1回開かれる重要な会議です。今年は5日から来週半ばまで行われ、向こう1年間の基本的な政策方針が確認されます。
すでに主な経済政策は発表され、日本でも報じられています。一国の政策が海外でこれだけ注目されるのは、米国と中国の場合だけでしょう。米国は依然超大国ですが、中国の影響力も今や欧州や日本を大きく上回るものと見られています。この現実を認め、米中二大国の関係を常に注視すべきです。
今年も目標達成へ
もちろん、中国も高成長を永久には続けられません。この全人代でも、実質国内総生産(GDP)の成長目標に関し、昨年の「6.5~7%」から今年は「6.5%前後」へ引き下げられました(昨年実績は6.7%)。
この目標を達成すべく、政策が適宜動員されるでしょう。今秋、中国では習近平政権が2期目(1期は5年)に入ります。権力基盤を固めるためにも、経済成長を頓挫させるわけにはいきません。道路、鉄道などのインフラ投資も今年、3千億ドル超の規模で行われる見込みです(他方、米国のトランプ大統領は「10年間で1兆ドル」のインフラ投資を宣言していますが、議会承認を得るのに苦労しそうです)。
リスクは残る
とはいえ、経済成長のみならずリスクの抑制も重要、という姿勢も全人代で打ち出されています(ここ数年、見慣れた姿勢ですが)。住宅バブルや企業債務の膨張、石炭・鉄鋼の過剰供給といったリスクです。
大都市の住宅は足元、前年比で20%ほど値上がりしています。そのため規制を強めたり金融緩和を抑制したりして、バブルを抑えることが必要です。もっとも、不動産の魅力が下がれば投資資金は株式に向かうでしょう。よって中国株の暴落から世界同時株安へ、という展開は、当面考えにくいでしょう。
ただし人民元については、緩やかな下落を許容する方針のようです。しかし人民元安は、トランプ氏らの怒りに火をつけかねません。そして米中貿易摩擦への懸念で、金融市場が動揺するかもしれません。
米中均衡を歓迎
実際、トランプ氏は貿易を米国に有利にしようと躍起です。そうした中で李克強首相は今般、反グローバリズムや保護貿易、主要国の「不確実性」が課題、と述べました。明らかに、米国への牽制です。
米中が互いに牽制し合う中、軍事力では米国が圧倒的優位に立っています。それにもかかわらずトランプ政権は、2018年度の国防費を10%増やす方針です。合理性を欠くと言わざるを得ません。
今週、北朝鮮がまたしてもミサイルを撃ち込みました。ここで米中の協調が求められますが、米国は北朝鮮への武力行使も検討している模様です。ただトランプ政権の判断力は、まだ信用できません。これに対し中国の場合、動機はともかく、北朝鮮と米国の双方がもっと冷静になるよう呼びかけています。
つまり今の世界では、かく乱要因が米国、牽制するのが中国、との構図が見てとれます(中国の海洋進出などは逆の構図ですが)。いずれにせよ米中が適度に対峙することで、一方の暴走や膨張が抑えられそうです。どちらにも従属すべきでない日本は、「米中の均衡」からなる新秩序を歓迎してよいでしょう。
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