トランプ政権のたどる道
米国では、権威主義は成功しない
トランプ政権下の米国を覆うムードは「混沌」です。ただ、時代や国が違っても人間の考えは同じようなものです。同政権のたどる道を見通すのは、案外容易かもしれません(日本の経験も参考になります)。
トランプ大統領の大きな特徴は、権威主義的な傾向です。「法よりも人による支配」を好む体制とも言えます。しかしそれが機能するには、統治される国民側の、おとなしく服従する姿勢が必要です。米国でそんな姿勢が浸透するとは思えません。よって権威主義と民主主義の衝突が今後、激化しそうです。
米国では、報道統制もうまくいかない
権威主義的な政権は、意に沿わない言論を排除しようと、ほぼ例外なく報道統制に乗り出します。トランプ氏の最大の敵も、やはりメディアでしょう。先週の記者会見や演説でも、メディア批判全開でした。
しかし米国のメディアは、権力批判や風刺を容赦しません。また、トランプ氏よりは信頼されています。そのためますます意気盛んに政権を批判するでしょう。同氏が任期(4年)満了前に失脚するとしたら、たとえばロシア絡みのスキャンダルが、メディアにより暴露された場合かもしれません。
邪悪な敵は誰か?
権威主義の政権は、「強い指導者」を演出すべく、国外にも「邪悪な敵」を設け対決姿勢を誇示します。
もっともトランプ氏は自由や人権などの価値観よりも、実利を優先します。よって米国は今後、同じく実利優先の日本や中国との間では、(倫理を尊ぶ欧州との間よりも)良い関係を築けるかもしれません。
ただし、厳しい移民制限は続くと予想されます。一旦挫折したイスラム教国からの入国制限令も、形を変えて導入されるでしょう。「反イスラム」は、宗教戦争のような熱狂を喚起できる面があるからです。
成果をアピールするために
また、どの国でも権威主義が権威を保つには、目覚ましい「成果」をアピールしなければなりません。
この点、トランプ氏は、年4%の経済成長率という大胆な目標を掲げています。しかし世界経済の急拡大期は一巡しているため、3%を超える成長率を持続的に達成するのは、ほぼ無理でしょう。
ただ、権威主義の政権は権威失墜を恐れるので、失敗が判明してもそれを認められません。トランプ政権も、目標未達の責任を外部へ転嫁するでしょう。前政権の「失政」、他国の貿易障壁、連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ、天候不順などです。また、経済統計の算出方法を変えようとするでしょう。
トランプ政権も株価上昇が生命線に?
ただし米国では、トランプ氏とは距離を置く閣僚や役人、議員が徐々に増えています。このため市場が期待する経済政策は、まとめるのに難航しそうです。議会審議を経て全容が固まるのは夏以降でしょう。
政策運営が混沌とする中、トランプ氏は米国株の上昇をアピールしたいところでしょう。先週の記者会見や演説でも、最近の株高が強調されました。オバマ前大統領はあまり行わなかったことです。株高が政権の生命線となれば、投機が容易になるような規制緩和が目指されるでしょう。よって移民政策の迷走や経済政策の遅れにもかかわらず、米国市場の(やや奇妙な)盛り上がりは、しばらく続きそうです。
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