次は「フレグジット」か?

2017/02/09

米欧ナショナリズムの危険

トランプ大統領に翻弄される米国に続き、欧州でも今年、ナショナリズムが猛威を振るうのでしょうか。

自国を愛するという意味でのナショナリズムは、悪いこととは言えません。しかし、手放しで賛美できるものでもありません。ナショナリズムは、他国民への差別や他国への攻撃を伴うことが多いからです。

欧州のナショナリズムが警戒される中、3月にはオランダで、9月にはドイツで総選挙が行われます。イタリアでも、年内の総選挙が見込まれます。英国は、欧州連合(EU)離脱に向けた交渉を始めます。

フランスをめぐる緊張

そして最近、にわかに緊張が高まっているのが、フランスの大統領選挙を取り巻く情勢です(4月23日に第1回投票、5月7日に決選投票)。というのも、最有力候補だったフランソワ・フィヨン元首相(中道右派)を、政治資金に関するスキャンダルが直撃しているからです。選挙戦撤退もあり得るでしょう。

これを受け、エマニュエル・マクロン氏(中道派)とマリーヌ・ルペン氏(極右)らを軸に大統領の座が争われる見通しとなっています。現時点の基本シナリオはマクロン氏勝利ですが、まだわかりません。

トランプ効果

ルペン氏が党首を務める「国民戦線」は、まさにナショナリズム政党です。今月5日にも同氏は、反グローバリズムや反移民などを宣言しました。こうした排外的な姿勢は通常、経済活動を妨げます。よって、ルペン氏勝利の可能性を警戒せざるを得ません(金融市場は、なぜかトランプ氏には寛大ですが)。

国民戦線は、その過激さゆえに傍流にとどまるだろう、とみられていました。ただ、ルペン氏は情熱的でありながらも主張はかなり整合的で、汚い言葉は使わないようです。そのため、トランプ氏の暴言に慣れてきた世界では、ルペン氏がさほど過激にみえなくなってきました。一種のトランプ効果でしょう。

フレグジットの脅威

ルペン氏は、当選したら通貨ユーロの使用に終止符を打ち、EU離脱を国民投票で問う、と公約しています。万が一、フレグジット(フランスのEU離脱)が現実となれば、衝撃はブレグジット(英国のEU離脱)どころの騒ぎではないでしょう。フランスは、ドイツと並び欧州統合の中核国であるためです。

ただし、米国のように低所得層の怒りをエリートや移民、他国へ向ける作戦が成功するかというと、疑問が残ります。フランスの場合、米国はもちろん、日本と比べても所得格差が小さいからです。

「反トランプ」が欧州の結束を促す

それでもルペン氏はトランプ旋風に乗じ、次は欧州大陸の人々が蜂起する番と息巻いています。またトランプ氏も、EUは「ドイツの道具」、北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」などと言っています。

しかし、挑発的な発言をトランプ氏が行うほど、反米感情が高まり、これが欧州の結束を促すでしょう。実際、欧州では多数の人々が、米大統領選挙の結果は自国にネガティブ、と懸念しています。

よって想定されるのは、EU瓦解よりも、欧州と米国との対立です。そんな中で日本は、どちらか一方に肩入れし過ぎるのは得策でないでしょう。すなわち、米国追随一辺倒は「時代遅れ」と言うべきです。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ