次は「フレグジット」か?
米欧ナショナリズムの危険
トランプ大統領に翻弄される米国に続き、欧州でも今年、ナショナリズムが猛威を振るうのでしょうか。
自国を愛するという意味でのナショナリズムは、悪いこととは言えません。しかし、手放しで賛美できるものでもありません。ナショナリズムは、他国民への差別や他国への攻撃を伴うことが多いからです。
欧州のナショナリズムが警戒される中、3月にはオランダで、9月にはドイツで総選挙が行われます。イタリアでも、年内の総選挙が見込まれます。英国は、欧州連合(EU)離脱に向けた交渉を始めます。
フランスをめぐる緊張
そして最近、にわかに緊張が高まっているのが、フランスの大統領選挙を取り巻く情勢です(4月23日に第1回投票、5月7日に決選投票)。というのも、最有力候補だったフランソワ・フィヨン元首相(中道右派)を、政治資金に関するスキャンダルが直撃しているからです。選挙戦撤退もあり得るでしょう。
これを受け、エマニュエル・マクロン氏(中道派)とマリーヌ・ルペン氏(極右)らを軸に大統領の座が争われる見通しとなっています。現時点の基本シナリオはマクロン氏勝利ですが、まだわかりません。
トランプ効果
ルペン氏が党首を務める「国民戦線」は、まさにナショナリズム政党です。今月5日にも同氏は、反グローバリズムや反移民などを宣言しました。こうした排外的な姿勢は通常、経済活動を妨げます。よって、ルペン氏勝利の可能性を警戒せざるを得ません(金融市場は、なぜかトランプ氏には寛大ですが)。
国民戦線は、その過激さゆえに傍流にとどまるだろう、とみられていました。ただ、ルペン氏は情熱的でありながらも主張はかなり整合的で、汚い言葉は使わないようです。そのため、トランプ氏の暴言に慣れてきた世界では、ルペン氏がさほど過激にみえなくなってきました。一種のトランプ効果でしょう。
フレグジットの脅威
ルペン氏は、当選したら通貨ユーロの使用に終止符を打ち、EU離脱を国民投票で問う、と公約しています。万が一、フレグジット(フランスのEU離脱)が現実となれば、衝撃はブレグジット(英国のEU離脱)どころの騒ぎではないでしょう。フランスは、ドイツと並び欧州統合の中核国であるためです。
ただし、米国のように低所得層の怒りをエリートや移民、他国へ向ける作戦が成功するかというと、疑問が残ります。フランスの場合、米国はもちろん、日本と比べても所得格差が小さいからです。
「反トランプ」が欧州の結束を促す
それでもルペン氏はトランプ旋風に乗じ、次は欧州大陸の人々が蜂起する番と息巻いています。またトランプ氏も、EUは「ドイツの道具」、北大西洋条約機構(NATO)は「時代遅れ」などと言っています。
しかし、挑発的な発言をトランプ氏が行うほど、反米感情が高まり、これが欧州の結束を促すでしょう。実際、欧州では多数の人々が、米大統領選挙の結果は自国にネガティブ、と懸念しています。
よって想定されるのは、EU瓦解よりも、欧州と米国との対立です。そんな中で日本は、どちらか一方に肩入れし過ぎるのは得策でないでしょう。すなわち、米国追随一辺倒は「時代遅れ」と言うべきです。
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