トランプ大統領は米国と日本を壊すのか?
なぜ失敗が予想されるのか?
トランプ新政権による政策は、総じて失敗すると予想されます。根本的な矛盾が三つあるからです。
まず、米国では所得格差の修正が急務であるのに、トランプ氏は富裕層の減税などに前向きです。おそらく格差はさらに広がり、低所得層でトランプ氏を支持する人は、裏切られたことに気付くでしょう。
また、米国民のほとんどは移民の子孫です(なお先住民族は現在、総人口の1%以下)。かつ、多様な人々が共存しています。それが強みである以上、過剰な移民制限は、米国の偉大さを破壊します。
何より、米国では「寛容と融和」の精神が今ほど求められるときはありません。しかしトランプ氏は、国民相互や他国への「怒りと憎悪」をあおることで当選しました。よって、分断修復は難しいでしょう。
入国停止令は合理性を欠く
トランプ氏も大統領になれば穏健になるだろう、という楽観は、2週間足らずで見事に粉砕されました。
世界を驚がくさせたのは、特定国からの移民や難民の入国停止です。突然発表されたこの大統領令は、単なるアピールでは済まされません。米国に入国できるか否かは、当事者には生死にかかわることです。
入国停止の理由として、テロリストを排除し国民を守るため、と言われています。しかし、このような措置でテロが減るとは考えられません。多くの人が指摘しているとおり、反米感情を高め、テロを誘発する可能性の方が高いでしょう。また、対象国をどのように特定したのか、合理的な説明はありません。
米国の底力
トランプ氏の横暴に対し今まで沈黙を守ってきた産業界も、入国停止令には抗議せざるを得ないようです。人道上の配慮に加え、ハイテク企業などの経営者や従業員には移民が多いという事情もあるのでしょう。裁判所、国務省、マスコミ、一部の議員、そして多くの人々からも、抗議の声があがっています。
これこそ、米国の偉大な底力でしょう(もし日本で何らかの権力乱用が行われたとしたら、同様の抗議運動が広がるでしょうか?)。米国は崩壊する、と断じるのはまだ早そうです。たとえば、この大騒動にもかかわらず米国株はさほど下落していません。皆、米国の強さは健在だと信じているのでしょうか。
日本は意地を見せられるか?
入国停止令に関しては、フランス、ドイツ、カナダなど、各国の首脳も懸念や救済策を表明しています。
日本は難しい立場ですが、来週末の日米首脳会談はむしろ好機かもしれません。本当に日本の存在感復活を望むのであれば、正論を貫きながら、人権の観点からトランプ氏に強烈な一撃を加えるはずです。
なお、貿易や為替についても厳しい協議が見込まれます。日本の対米黒字は相応に大きく、トランプ氏がよく攻撃するメキシコと同じくらいです。中国に矛先を向けさせようとしても無駄でしょう。
ここでの正論は、貿易赤字が「負け」というのは誤り、ということです。また、為替については市場原理に沿って動きます。よって、政策で円安へ誘導したのではない、と強弁してよいかもしれません。ただその場合、円安・株高はアベノミクスの成果、とする理屈は崩壊してしまうのが悩ましいところです。
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