オバマ大統領をたたえる

2017/01/18

気高い人格

米国ではトランプ政権がもうすぐ誕生します。しかし忘れてならないのは、オバマ大統領の功績です。

オバマ氏は、トランプ氏とは対照的な人物です。米国の良き価値観を体現する人だと言えるでしょう。自由と民主主義、ヒューマニズム、寛容さなどの価値観です。善意と温かみにあふれ、ユーモアのセンスも抜群でした。同氏の政策に賛否両論があるのは当然ですが、気高い人格を疑う人は少ないでしょう。

理想主義的世界観

ただ、オバマ氏は理想や原則にこだわり過ぎだった、というような批判も少なからず見受けられます。

しかし、他国から尊敬を得るには、理想を掲げ続けなければなりません。あるいは、理想を軽視すれば、人権よりも経済の利益や政治の権力が優先され、国際社会は偏狭な主張をぶつけ合う場となるでしょう。また、大統領が客観的な原則よりも激情にかられた発言を連発すれば、政策の一貫性が損なわれます。

現在、政権移行期としてはトランプ氏の不人気ぶりが際立つ一方、オバマ氏の支持率は約55%と、就任直後以来の高さへ上昇しています。人々は、オバマ氏の偉大さを再認識したのでしょうか。

期待外れだったのか?

初の非白人大統領が誕生した8年前、米国は変化への希望に包まれ、世界中がそれを歓迎しました。

それを思うと、オバマ氏の実績は物足りません。とりわけ人種差別は相変わらずです。エリートの固定化も修正できませんでした。トランプ旋風を許した責任の一端は、オバマ氏にあるのかもしれません。

しかし、米国は巨大で複雑な民主国家です。そのため、大統領一人の力で劇的に変わるということは、本来、あり得ません。そんなことが起こるとしたら、民主制ではなく、強権的な独裁制と言うべきです。

最低限の使命は果たした

とはいえ、正当に評価すれば、オバマ氏は最低限の使命は果たしたと言えます。8年前には、米国は金融危機と大不況に苦しんでいたのです。よって同氏の使命は、何より経済を成長軌道に戻すことでした。

そして今、米国はすでに利上げを始めています。経済がいち早く立ち直った証拠でしょう(これに対し、日本やユーロ圏は、異常な金融緩和の泥沼から未だに抜け出せません)。また、8年前に比べると雇用者数は1千万人以上も増え、株価指数は約2.5倍となりました。もし表面上の雇用回復や株価上昇を政策の実績に含めてよいのであれば、オバマ政権は大成功を収めたと言わなければなりません。

オバマ氏の活躍は終わらず

安全保障や気候変動など国際協調を要する多くの問題においても、オバマ氏は高い理想を貫きました。

画期的な成果は、核兵器廃絶に向けた広島訪問、キューバとの国交回復、イランとの核合意などです。地球温暖化対策としては、クリーンエネルギーの普及に努め、昨年にはパリ協定発効を成功させました。

それでも、米国の存在感低下は続いています。これに伴い、中東地域などの秩序が乱れています。トランプ氏がオバマ氏の政治遺産を潰していけば(イランへの制裁再開など)、混乱はさらに広がるでしょう。

しかしオバマ氏は、米国や世界の問題に関し、今後も発言や助言を行っていく意向のようです。トランプ氏の猛攻に抗い自由と理想を保守せんとする民主派にとって、オバマ氏の存在は心強い限りでしょう。

 

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