混迷の世界における日本の役割
世界の変化
今年の世界は、基本的な平和が保たれる限り、昨年をやや上回る経済成長をとげると予想されます。
とはいえ新政権が発足する米国を中心に、経済政策や国際情勢には大きな不確実性がつきまといます。そのためドナルド・トランプ氏の発言などをめぐって、金融市場やマスコミはその都度大騒ぎするでしょう。しかしもっと重要なことは、緩やかな成長の背後で着実に進む、世界経済の歴史的な変化です。日本の役割も見直しを迫られますが、それを考えるには、主要国の現況を把握することが必要です。
米欧の分断
米国や欧州は、極めて厳しい疾病を患っています。キーワードで表わすとすれば、「分断」でしょう。
それは、富裕層と低中所得層との分断、エリートと非エリートとの分断、人種の分断、地域の分断など、多岐にわたる分断です。反グローバリズムやポピュリズムに活路を求めても、事態は悪化するばかりでしょう。むしろ、各国が身勝手に振る舞えば、米国と欧州との分断、欧州各国間の分断が進むでしょう。
米欧の経済見通し
にもかかわらず、米欧の表面的な経済指標は、総じて底堅さを示す可能性が高いでしょう。米国の場合、今年の国内総生産(GDP)成長率は2%程度、ユーロ圏は1%台半ば程度の成長率が予想されます。
しかし、絶好調とは言えません。米国では、次期政権の政策が固まり、効果が表れ出すのは今年後半以降です。当面、ドル高が輸出を圧迫する上、金利上昇や政策の不透明感が設備投資を抑制するでしょう。ただ、ドル高による購買力向上は、米国経済を主導する個人消費には好材料です。また、景気が絶好調でない以上、米連邦準備制度理事会(FRB)による今年の利上げは、2回以内にとどまりそうです。
ユーロ圏は、低成長ながらも、3年以上にわたり四半期のGDP成長率がプラスを保っています。失業率は徐々に下がってきています。そのため、民衆の不満が爆発して欧州連合(EU)が瓦解するという、革命的な事態には至らないでしょう。ただし、EU離脱交渉を始める英国の動向には、注意を要します。
アジアの安定
一方、日本や中国をはじめとするアジアの状況は、「安定」というキーワードが当てはまるでしょう。
日本のGDP成長率は、今年も昨年並み(1%前後)が予想されます。世界的にみれば低いものの、安定感はあります。人口減少を止められなかった以上、プラス成長を維持できれば十分なのでしょう。また、日銀のインフレ目標(2%)は今年も達成には遠く、1%以下のインフレ率で「安定」するでしょう。
アベノミクスは結局、期待外れでした。それでも日本株は上がり、当面高値を保ちそうです。つまり、日本社会の分断は米欧ほどではないとはいえ、実体経済と株価との分断に限れば、日本でこそ顕著です。
日本の役割
中国に目を転じると、今年のGDP成長率は6%台半ばになりそうです。鈍りつつあると言っても、米欧や日本に比べれば高成長です。過剰債務などの問題を抱えつつ、旺盛な消費、段階的な市場開放といった傾向に変わりはありません。そして米欧とは異なり、中国や日本は、グローバル化に積極的です。これは大きな強みでしょう。アジア全体の経済規模が米欧を追い越すのは、時間の問題です。
ただし、中国が世界のリーダーになるには、非民主的な政治体制が障害となるでしょう。国際社会において民主主義は、少なくとも建前上、依然として尊ぶべき価値を帯びているからです。
しかし米国は、トランプ氏のもとで専制的な国へ堕ちつつあります。すなわち世界では今、リーダーに適した国が不在です。
そうした中で日本は、「グローバル化」と「民主主義」の両方、さらには「平和」の価値を、堂々と主張すべき立場にあります。混迷の世界にあって日本の役割は、実は極めて重大と言えます。
印刷用PDFはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会