米国で何が起こっているのか?
トランプ現象の世界史的文脈
米大統領選では、ドナルド・トランプ氏が勝利しました。世界史に残るべき出来事です。
トランプ現象とは、現状に不満を持つ人々(特に白人労働者)のエリートへの反乱、と言えます。その勝利は多くの人(筆者を含め)にとって予想外でしたが、人々のパワーを甘く見ていたということです。
米国の主要なマスコミの願望も裏切られました。これは、「公式の論調」と「人々の本音」がいかに大きく乖離しているかを物語っています。6月に欧州連合(EU)離脱を選んだ、英国と似た構図です。
米国社会の階層化
問題は、階層が固定化され「機会の平等」が建前にすぎなくなっていることです。このため、今の政治・経済はエスタブリッシュメント(既存権力)に都合よく操作されている、との主張が共感を得ています。
そうした社会の歪みを正すべき、と力強く主張したのが、民主党の有力な大統領候補だったバーニー・サンダース氏です。ヒラリー・クリントン氏も、そうした主張を部分的に採用したように見えました。
クリントン氏の敗因、トランプ氏の勝因
しかしクリントン氏自身が、エスタブリッシュ側の人です。そのため、本気で社会変革に取り組むのか、との疑念が消えませんでした。トランプ氏ほどではないとはいえ、好感度も低いのが実状です。
たしかに、トランプ氏の差別的な言動などは醜く、道徳に反しています。しかし、その率直な発言が、人々の胸に響いたのでしょう。クリントン氏には、そういった「言葉の迫力」が決定的に欠けています。
あのオバマ大統領ですら、社会の歪みを直せませんでした。こうなると、好感は持てなくてもトランプ氏のような異端者に賭けるしかない、となるのは自然な心理だったのでしょう(所詮、後知恵ですが)。
かすかな希望
また、連邦議会選の結果、上院・下院とも、トランプ氏の属する共和党が過半数を制しました。
これにより、トランプ氏が主張する政策のうち、インフラ投資の拡大など比較的穏健なものは実行しやすくなるかもしれません。一方、過激な策は共和党内でも支持を得にくいでしょう。よって、トランプ大統領のもとで米国の景気はむしろ良くなるかもしれません。その場合、株式市場などにも追い風です。
ただし米国や英国で起こっているのは、あくまでも既存権力への反逆です。トランプ大統領や共和党は、これを真摯に受け止められるのでしょうか。今後は、かすかな希望と大きな不安が交錯しそうです。
日本は「真の独立」へ?
さらに警戒すべきは、米国の内向き姿勢です。これが強まれば、国際秩序は大きく変わるでしょう。
日本は、最も甚大な影響を受ける国の一つです。トランプ氏は、在日米軍の費用を日本に全額負担させる、などと述べているからです。日本は、安易な妥協よりも、米国依存からの脱却を探るのでしょうか。いずれにせよ財政には多大な重荷となりますが、自主防衛に転じる良い機会だと開き直るべきでしょうか。
もちろん大統領に就任すれば、トランプ氏の主張は、ある程度、現実路線へ修正されるでしょう。しかし、トランプ氏が日米同盟を軽んじているのは、ほぼ明らかです。よって、安易な楽観は禁物です。
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