手本としての中国

2016/10/26

驚くべき安定性

中国は、経済、政治や言論の自由を統制しながらも、高めの経済成長を安定的に続けています。

最近発表された7-9月期の国内総生産(GDP)は、前年比6.7%増となりました。1-3月期および4-6月期と同じ伸びです。驚くべき安定性ですが、中国でも3期続けて同じというのは例がありません。

中国の統計は不完全なので、数字をそのまま信じるわけにはいきません。それでも中国の場合、公式の経済成長率を一定範囲に収めるのは不可能ではないでしょう。計画を重んじる社会主義の国だからです。

年間の成長目標である「6.5~7%」も達成確実でしょう。来年も6.5%程度の成長率を目指すとみられます。今回のGDPは、中国政府が安定的な成長を何より重視していることを示しているからです。

消費中心の経済へ

中国の「真の成長率」はもっと低いとしても(5%程度か)、日米などより高いのは間違いありません。

中国は今や消費やサービス業が中心なので、「世界の工場」と見るだけでは実態をつかめません。実際、小売売上高の伸び(9月に前年比10.7%)は、鉱工業生産の伸び(同6.1%)を大きく上回っています。

特に新車販売台数は、減税効果もあり同10%以上の伸びです。年間では日本の5倍に達するでしょう。自動車販売の半分超は外資との合弁企業によるものなので、その統計は信じてよさそうです。

コントロールされた市場

ただ、高めの成長率は、金融緩和に伴う住宅市場の過熱や大規模な財政支出にも支えられています。

とりわけ、北京や上海などの住宅価格は前年比30%ほど上昇しています。これに慌てた政府は、住宅購入時の頭金比率を引き上げたりして、バブルを抑えようとしています。「市場の過熱→規制強化→市場の低迷→規制緩和→市場の過熱」という循環は、今までも頻繁に見られたことです。つまり住宅価格は上下しているので、全国的に地価が上がり続けた日本のバブル期ほどの危うさはないでしょう。

要するに、社会主義国であるがゆえ、中国経済は政策によってかなりの程度コントロールされています。金融市場も同様です。人民元については緩やかな下落を容認するようで、現在、対ドルで約6年ぶりの安値です。株価については、政府による下支え姿勢を背景に、このところ安定した動きとなっています。

統制された安定

以上のように中国は、社会主義的な経済統制と景気対策のもとで、経済や政治の安定を保っています。

ちょうど今、共産党の第18期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が開かれています(27日まで)。主要議題は、党内規律の引締めです。権力の腐敗が党への信頼を損なうのを恐れているのでしょう。

それでも中国は、自国の経済・政治体制への自信を強めているかもしれません。米欧発の金融危機により資本主義の欠陥が、今年の米大統領選により民主主義の弱点が、いずれも露呈してしまったからです。

まるで中国を手本にしているかのように見えるのが、日本です。金融緩和や財政出動など政策への依存が深まり、金融市場は日銀が操作しようとしているためです。GDPが伸びない中、その算出方法を変えようという動きも出てきました。日本も、中国のように「統制された安定」を目指すのでしょうか。

 

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