世界経済をめぐる悲観と楽観
IMFの世界経済見通し
世界経済についての見方は、このところ、少なからず悲観的なトーンに傾いているように見えます。
たとえば国際通貨基金(IMF)は、今月発表した見通しで、世界経済の成長は「遅すぎる」などと述べました。そして、貿易の鈍化や政治の不安定化など、多岐にわたるリスクを数多く指摘しています。
しかしそういったネガティブな判断は、低成長にあえぐ先進国の視点に偏り過ぎていると思われます。中国などアジア新興国は、相変わらず活気に満ちています。世界全体を悲観する必要はないでしょう。
足を引っ張ったのは米国
IMFの見通しでも、「日米欧など先進国の停滞、中国など新興国の景気拡大」という構図が鮮明です。
今年の世界経済に関しIMFは、1月時点では3.4%と予想していました。しかし今月、これが3.1%まで引き下げられました。主因は、米国の大幅な下方修正です(1月時点は2.6%、今月は1.6%)。
誤っていたのはIMFだけではありません。年初には、世界の成長を支えるのが米国で、足を引っ張るのが新興国、と多くの人が見込んでいたのです。ところが現実に起こったのは、それとは逆のことです。
欧州も低成長、日本は超低成長
ユーロ圏の成長率については、IMFの予想(今年1.7%)が正しければ、意外にも、米国を上回ります。しかし、低成長であることに変わりはありません。また、昨年実績(2.0%)に比べれば減速です。
さらに低いのが、日本の成長率です。IMFの予想(今年0.5%)が正しいかはともかく、アベノミクスの目標(実質成長率2%)が近いうちに実現すると期待する人は、もはや国内でも少ないでしょう。
先進国の政治的混迷
先進各国が明るい見通しを描けずにいるのは、政治の混乱や政策の行き詰まりも大いに関係しています。
とりわけ米国の大統領選をめぐる最近の様相は、異様としか言いようがありません。これにより、米国文化の醜悪な面が世界中に知れ渡ってしまいました。米国の中でも、政治不信が強まるばかりでしょう。
欧州連合(EU)では、英国の脱EU、移民問題、ギリシャなど財政危機国の救済といったことを受け、統合の理念が疑問視されています。とはいえ各国単独では、世界での存在感が低下するのは明らかです。
日本では、好景気を演出すべく株価が支えられても、経済の実力は高まりませんでした。多くの人は、この事実に気付いています。それでも内閣支持率が高めなのは、強力な野党が現れないからでしょうか。
先進国中心主義は時代遅れ
一方、中国や東南アジアの新興国では、先進国に比べると、はるかに高い経済成長率が続きそうです。
中国については貿易など弱めの指標も見られますが、所得増や財政出動などにより、6%台の成長を示し続けるでしょう。IMFも、今年の成長率予想を引き上げました(1月時点は6.3%、今月は6.6%)。
失態をさらす米国や日本だけを見ていると、悲観に傾くのも無理はありません。しかし「先進国中心主義」的な世界観は、もう時代遅れです。世界では今、人口で約85%、経済規模で約40%を新興国が占めています。そのような新興国の発展に目を向ければ、もっと楽観的な展望が開けるでしょう。
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