「クリントンvs.トランプ」の行方は?

2016/09/29

米国の根本問題と大統領選

米国社会は混迷に陥り、大統領選(投開票11月8日)も接戦です。今週の第1回討論会ではクリントン氏が優位に立ちましたが、あと2回(10月9日、19日)の討論会で、逆転もあり得ます。

混迷の根底には、米国の根本問題があります。所得や資産、権力がごく一部の人や企業に集中し、格差が固定され、社会の分断・亀裂が深まるという問題です。世界的な現象とはいえ、特に米国で顕著です。

オバマ大統領の悲願は成らず

「分断から融和へ」という悲願を抱き、8年前に登場したのが現大統領のバラク・オバマ氏です。しかしその後、表面的な雇用情勢などは回復したものの、社会の分断が改善されたとは到底言えません。

同大統領は、志半ばで任期満了となります。独裁者の出現を防ぐべく、大統領職は2期8年までとなっているからです。来年1月からは、同じ民主党のヒラリー・クリントン氏がオバマ氏の路線を引き継ぐのでしょうか。それとも、共和党のドナルド・トランプ氏が「偉大な米国」を目指すのでしょうか。

クリントン氏の「柔軟性」

クリントン氏は、格差の是正に積極的であるように見えます。実際、公約の中核には最低賃金の引上げや富裕層への増税が掲げられています。ただ、これが強い信念に基づくのかどうか、よくわかりません。

大統領選に勝つには格差是正を訴えるのが得策、との計算もあるのでしょう。国務長官のとき自ら推進していた環太平洋経済連携協定(TPP)に関し反対派に転じたのも、労働者票を得るためのようです。

しかしそうした「柔軟性」は、同氏はあまり信用できない、という批判に根拠を与えかねません。最近では持病疑惑も浮上しました。もし大統領選で敗れるとしたら、信用がさらに失墜した場合でしょう。

トランプ氏の挑戦

冷たいイメージもあるクリントン氏に対し、率直な発言で既存秩序に挑むのがトランプ氏です。英国での欧州連合(EU)離脱派勝利にも励まされたようです。変革を求める民衆の力を感じたのでしょう。

不法移民の排斥や国内産業の保護といった主張が不満層に支持されるのは、決して不思議ではありません。また、不満の受け皿としてナショナリズム(自国中心主義)が利用されるのは、どの国も同じです。

こうした「反グローバリズム」こそ、トランプ氏の主張をめぐる世界的論点でしょう。また同氏は法人税の減税や相続税の廃止を主張しており、経済政策に関する両候補者の違いは、今や鮮明です。

その結末と金融市場

それでも結局、クリントン氏が勝つと予想されます。米国内の多様な集団に非寛容なトランプ氏の姿勢では、社会の分断が一層深まる可能性が高いからです。このことを、大半の人は理解しているはずです。

対外的な点でも、トランプ氏は偏った考えにとらわれています。たとえば国内産業を保護しようと輸入を制限すれば、安価な物やサービスが得にくくなります。それは、米国の人々にとって不幸なことです。

むろん、米国の根本問題が「クリントン大統領」のもとで改善するとは楽観できません。一方、トランプ氏の減税策や規制緩和策は本来、金融市場好みです。よって「トランプ大統領=株価暴落」とも限りません。とはいえ市場は不透明感を嫌うので、より手堅いクリントン氏の勝利を待望しているようです。

 

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