G20におけるグローバル化の議論

2016/09/07 <>

G7からG20へ

9月5日まで、中国の杭州にて20か国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれました。採択された宣言は盛りだくさんですが、世界経済をリードしようという、中国の意気込みが印象的でした。

なお、日本では5月、伊勢志摩での先進7か国首脳会議(G7サミット)が話題になりました。しかし地球規模の課題を話し合うには、中国など主要な新興国を含むG20の方が、より重要となっています。

欧米の「内向き姿勢」

ただし、世界経済は今、成長率こそ鈍っているものの、危機的と言うほどではありません。G7サミットにおいて、現況とリーマンショック前との類似性を列挙した安倍首相は、世界を悲観しすぎています。

また、今の問題は、単なる成長の下振れというより、思想的な意味を含んでいます。すなわち、「グローバル化(世界の一体化)の是非」が問われているのです。G20サミットのテーマも、そのことでした。

それは、欧米で「内向き姿勢」や「保護主義」の動きが広がっているからです。英国は6月、欧州連合(EU)離脱を選びました。米国では11月の大統領選にあたり、自国産業の保護が叫ばれています。

中国の「外向き姿勢」

ここでグローバル化への支持を表明したのが、今回のサミットの議長国である中国です。これは当然でしょう。この15年ほど、グローバル化のおかげで最も成長したのは中国、と言えるからです。

実際、中国は「外向き姿勢」を強め、グローバル化に突き進んでいます。それを表わすのが「一帯一路(中国から欧州を結ぶ経済圏)」の構想や、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。AIIBについては日米を除くほとんどの主要国が参加し、まさにグローバルな動きとなりつつあります。

グローバル化の流れは続く

一方、欧米では、中国からの輸入増により国内産業の雇用が奪われている、との不満が絶えません。G20サミットでも、中国における鉄鋼の過剰な生産・輸出への懸念が、とりわけ欧州から示されました。

要するに、グローバル化という今世紀の、おそらく不可逆的な流れに、うまく乗っているのが中国です。反対に、グローバル化によって国内の産業・雇用が脅かされ、防戦に回っているのが欧米だと言えます。

この点では、中国が有利です。「グローバル化は良いこと」という価値観自体は、G20首脳間でほぼ共有されているからです。そして貿易の自由が促されれば、通常、人件費などの安い方が有利になります。

「洗練された資本主義」を目指して

グローバル化のメリットは、中国のほか、多くの新興国が受けています。半面、新興国への生産移転などのため、先進国の一般的な賃金は上がりにくくなっています。すなわち「グローバル化の是非」とは、新興国と先進国が平準化(生活水準の接近など)していく過程で、避けて通ることのできない問題です。

よって、新興国と先進国との利害調整が欠かせません。その主な舞台こそG20サミットです。そして今回の会議では、資本主義をもっと洗練させるべき、との旨が確認されました。鍵となるのはこの視点でしょう。実際、反グローバリズムを阻止するには、各国内の格差を抑えることが必要です。言い換えれば、グローバル化の果実がより多くの人に分配されるよう、「洗練された資本主義」を目指すべきです。

 

印刷用PDFはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会