G20におけるグローバル化の議論
G7からG20へ
9月5日まで、中国の杭州にて20か国・地域首脳会議(G20サミット)が開かれました。採択された宣言は盛りだくさんですが、世界経済をリードしようという、中国の意気込みが印象的でした。
なお、日本では5月、伊勢志摩での先進7か国首脳会議(G7サミット)が話題になりました。しかし地球規模の課題を話し合うには、中国など主要な新興国を含むG20の方が、より重要となっています。
欧米の「内向き姿勢」
ただし、世界経済は今、成長率こそ鈍っているものの、危機的と言うほどではありません。G7サミットにおいて、現況とリーマンショック前との類似性を列挙した安倍首相は、世界を悲観しすぎています。
また、今の問題は、単なる成長の下振れというより、思想的な意味を含んでいます。すなわち、「グローバル化(世界の一体化)の是非」が問われているのです。G20サミットのテーマも、そのことでした。
それは、欧米で「内向き姿勢」や「保護主義」の動きが広がっているからです。英国は6月、欧州連合(EU)離脱を選びました。米国では11月の大統領選にあたり、自国産業の保護が叫ばれています。
中国の「外向き姿勢」
ここでグローバル化への支持を表明したのが、今回のサミットの議長国である中国です。これは当然でしょう。この15年ほど、グローバル化のおかげで最も成長したのは中国、と言えるからです。
実際、中国は「外向き姿勢」を強め、グローバル化に突き進んでいます。それを表わすのが「一帯一路(中国から欧州を結ぶ経済圏)」の構想や、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。AIIBについては日米を除くほとんどの主要国が参加し、まさにグローバルな動きとなりつつあります。
グローバル化の流れは続く
一方、欧米では、中国からの輸入増により国内産業の雇用が奪われている、との不満が絶えません。G20サミットでも、中国における鉄鋼の過剰な生産・輸出への懸念が、とりわけ欧州から示されました。
要するに、グローバル化という今世紀の、おそらく不可逆的な流れに、うまく乗っているのが中国です。反対に、グローバル化によって国内の産業・雇用が脅かされ、防戦に回っているのが欧米だと言えます。
この点では、中国が有利です。「グローバル化は良いこと」という価値観自体は、G20首脳間でほぼ共有されているからです。そして貿易の自由が促されれば、通常、人件費などの安い方が有利になります。
「洗練された資本主義」を目指して
グローバル化のメリットは、中国のほか、多くの新興国が受けています。半面、新興国への生産移転などのため、先進国の一般的な賃金は上がりにくくなっています。すなわち「グローバル化の是非」とは、新興国と先進国が平準化(生活水準の接近など)していく過程で、避けて通ることのできない問題です。
よって、新興国と先進国との利害調整が欠かせません。その主な舞台こそG20サミットです。そして今回の会議では、資本主義をもっと洗練させるべき、との旨が確認されました。鍵となるのはこの視点でしょう。実際、反グローバリズムを阻止するには、各国内の格差を抑えることが必要です。言い換えれば、グローバル化の果実がより多くの人に分配されるよう、「洗練された資本主義」を目指すべきです。
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