「失敗の本質」と「脱GDP成長」
遠のく成長目標
日銀の「物価上昇率2%」と同じく、政府の「実質成長率2%」という目標は、ほぼ達成不可能です。
4-6月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0.0%増(年率0.2%増)、前年比0.6%増にとどまりました。内容も冴えません。特に、個人消費は前期比でわずかな増加、設備投資は2期続けて減少です。
結局、現政権のもとで、日本経済の成長率は下がってしまいました。日本は超低成長との評判が定着し、今年も2%どころか0%台の成長率が見込まれます。最近決まった経済対策が進められても、0%台のままでしょう。それでも責任が問われないのは、日本国民が優しいからでしょうか。
幻想から諦念へ
あるいは「日本はもう成長できない」と諦めてしまったのでしょうか。そうなるのも当然かもしれません。アベノミクスの幻想に捉われていた人は、正気を取り戻すと、諦念の境地に入りたくなるでしょう。
幻想が振りまかれたのは、「ムード」を明るくすれば景気は良くなる、という説が信じられたからです。やたらと威勢のよいスローガンが掲げられるのは、そのためです。日銀が「期待」「コンフィデンス」「マインド」といった言葉を好んで用いるのも、経済とは「気持ちの問題」だという前提に基づいています。
そうした政策姿勢への配慮のためか、多くの言論人は、政府や日銀への批判を自粛しました。そしてそのような尽力のおかげで、アベノミクスが始まった2013年頃、浮ついたムードが世の中を覆いました。
失敗の本質は何か?
にもかかわらず日本経済は、株価と為替を除けばほとんど何も変わりませんでした。経済とは、単なる気持ちの問題ではなかったのです。つまり、成長率の低下には、実体的かつ合理的な理由があります。
日本の場合は、もちろん、少子高齢化・人口減少、および経済の成熟化(インフラや必需品がすでに普及)です。また、革新的な技術や製品が少なくなったことが、国際的な存在感の低下につながりました。
それらに関し、現政権は本気で取り組んだとは言えません。一方、非合理的なムードを高揚させることには、あらゆる手段(報道干渉など)が使われました。すなわち、経済は本来、かなりの程度合理的です。しかし現政権のもとでは、非合理的なことに力が注がれたのです。これこそが「失敗の本質」です。
それでも日本は恵まれているが
低成長でも日本は、比較的平和で豊かな国です。また、日本株は、日本全体のGDPとは連動しません。したがって、日本は0%台の成長率が精一杯だが、それで十分、という考え方も、誤りではありません。
ただし、この場合、二つのことを考える必要があります。第一に、高い経済成長率を前提につくられた、現行の社会保障制度は見直さなくてはなりません。たとえば、富裕層の増税・年金減は必須でしょう。
第二に、アジア新興国などの進化速度は凄まじく、数年で違う国のようになります。そうした中で停滞する日本が一目置かれるには、「脱GDP成長」に向け、新たな価値観を樹立すべきでしょう(なお、計算法を変えてGDPを良く見せても、統計が信用を失うだけです)。これらを怠り無為に過ごしてきたのが、アベノミクスの3年半でした。「道半ば」などと、悠長なことを言い続ける余裕はもうありません。
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