異次元緩和が挫折した後の経済政策
失望と希望
7月末に日銀が行った金融政策決定会合は、失望や違和感とともに、一筋の希望をもたらしました。
日銀が今回決めたのは、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買入れ額を増やすことです。過激な策を熱望していた人には、物足りない策でしょう。また、ほとんどの人は違和感を覚えたはずです。
違和感の理由
そもそも、インフレ率を2%へ高め、安定させるための政策が、異次元の金融緩和でした。この点、日銀がETFを購入すれば、なぜインフレ目標達成に役立つのか、うまく説明できる人はいないでしょう。
あえて言えば、「ETF購入→株価上昇→投資家の購買力向上→消費増→インフレ率上昇」ということでしょうか。ところが日本の場合、「株価」と「消費」は全く関係ないと言っていいほどです。
では「株高→(株高に伴う反射的な)円安→高インフレ」との経路はどうでしょうか。これも、安定したインフレにつながりません。最近実証されたとおり、円安によるインフレは消費を圧迫するからです。
ETF購入が呼び起こす「正しいイメージ」
よってETFの購入は、「株価を目標にしている」と見るのが、この施策の「正しいイメージ」です。
日銀が年間6兆円ものETFを買う(従来は3.3兆円)という今般の決定は、たしかに日本株をサポートするでしょう。よって日本株は、向こう1~3年程度は注目すべき投資対象になり続けるでしょう。
ただ、あからさまな「PKO(価格維持操作)」は、市場機能を歪めます。にもかかわらずこれに乗り出したということは、異次元緩和の理論が破たんし、その実践が挫折したことを、明瞭に示しています。
「総括的な検証」で現実路線へ?
つまりETFの買入れ以外、目先の副作用が小さい追加策は、ほぼ尽きてしまいました。また、インフレ目標が遠ざかる中、政策会合のたびに追加策をめぐる報道が飛び交い、為替市場などは大荒れです。
日銀が今回「9月に政策効果を総括的に検証」としたのは、そういう問題のためでしょう。これを機に現実的な路線へ転換すれば、長い目で見ると市場の安定に寄与するはずです。ここに、希望が持てます。
ただ、政策が「株価を目標にしている」以上、どう総括され、何が決まるかは、株価次第です。9月の会合前に株価が上がっていれば、インフレ目標の柔軟化(達成期限の撤廃など)や国債買入れの段階的調整が議論されるでしょう。一方、株価が大きく下落していれば、問題が先送りされるだけでしょう。
金融政策から財政政策へ、という発想
8月2日には、政府が経済対策を発表しました。金融緩和が挫折したので財政政策を、というのは、いかにも安易な発想です。そして内容よりも規模が優先され、事業規模は約28兆円まで膨らみました。
しかし、これは政府系金融機関の融資枠なども含みます。政府がお金を使ったり配ったりする(よって一時的な需要創出が見込まれる)、「真水」は事業規模の約4分の1にすぎません。とはいえ、真水が膨張しても非効率な支出が行われるだけなので、この程度で抑えられたと安堵すべきでしょう。
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