伊勢志摩サミットに向けて

2016/05/19

日本経済の現実

アベノミクスが始まって約3年半が経過しました。そろそろ現実に正面から向き合うべきでしょう。

今般発表された1-3月期の実質国内総生産(GDP)は、前期比0.4%増(年率1.7%増)となりました。例年より1日多い「うるう年効果」があったことなどを踏まえると、物足りない結果です。

GDPは個人消費次第ですが、これは前期比0.5%増となりました。昨年10-12月期に落ち込んだ(同0.8%減)後としては、鈍い回復です。政府や日銀が好む「天候不順」という言い訳は、もう使えません。

「データが不正確」とも言えません。既存のデータに納得がいかない日銀は今月、「消費活動指数」を発表し始めました。しかしこれは2期連続で前期比マイナスとなり、むしろ消費の弱さを裏づけました。

「脱インフレ不安」が必要

また、2015年度の実質GDP成長率は0.8%となりました。政府の目標(2%)や見通し(昨年7月時点で1.5%、12月時点で1.2%)を大きく下回る結果です。これを見て、GDPは国の豊かさを適切に表わすものではない、と言い出すのは潔くありません。それを承知の上で、今まで用いてきたのです。

ただ、明るい材料もあります。雇用者報酬が増えていることです(1-3月期は実質で前期比1.3%増)。賃金増がインフレに追いついてきたということですが、これは主に、インフレ率が下がったおかげです。

今後の注目点は、過度な円安が抑えられ、それが食品などの値下げに反映されるか、です。原油も今の価格以下にとどまるのが理想です。そうなればインフレ不安が和らぎ、前向きな支出が増えそうです。

アベノミクスが残した教訓

つまり、円安などでインフレにすれば消費が増えるはず、という「リフレ」の考え方は正しくありません。また、輸出や生産がさほど増えなかった以上、単純に円安は良いことだと言えなくなりました。

とはいえ、アベノミクスを象徴する異次元緩和は、株価を支える上では効果があったかもしれません。しかし、金融緩和や年金資金に頼った株価は、実体経済と相関しないことがはっきりしました。アベノミクスのもとで日本株は大きく値上がりしたのに対し、実質GDP成長率は下がってしまったのです。

さらに、消費税増税の影響は甚大であることを、皆が認めるようになりました。来年の再増税が延期されるかはともかく、「増税の影響は軽微」という論調が支配的だった2年前に比べれば、大きな進歩です。

このように、アベノミクスという実験により多くの教訓が得られました。これを無駄にはできません。

現政権の幸運は続いている

5月26日、27日、日本にて先進7か国による首脳会議(G7伊勢志摩サミット)が開かれます。以前から形骸化が進んでいるサミットですが、日本の主張を世界に発信するには良い機会かもしれません。

ただし、一部の人が叫ぶ「財政出動の協調」では特段の成果は得られないでしょう。G7のうち景気後退に陥る可能性が最も高いのは日本であり、他国では景気対策の緊急性が乏しいからです。また、日本では財政出動の効果は減退し、逆に工事費高騰など弊害が目立ちます。これもアベノミクスの教訓です。

日本は結局、よほど大きな改革(たとえば、首都移転、再生可能エネルギーへの完全移行など)に取り組まない限り、閉塞状態から脱するのは困難です。ただ、そうした大改革を今回のサミットで表明するとは、むろん期待できません。

しかし今回は、脱税回避や核軍備縮小といった、成長以外の面で世界に呼びかけることができます。今まさに、租税問題では「パナマ文書」が注目されています。核問題では、退任間近の米大統領が、政治的な遺産づくりのため広島を訪問する予定です。アベノミクスは成功していないものの、参院選を控え、現政権の幸運はまだ続いているようです。

印刷用PDFはこちら

http://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ