「世界経済見通し」と「パナマ文書」

2016/04/13 <>

IMFは今回も下方修正

4月12日に発表された国際通貨基金(IMF)の経済見通しによれば、今年の実質総生産(GDP)成長率は世界全体で3.2%と予想されています。昨年の実績(3.1%)とほぼ同じ程度ということです。

1月時点の予想(3.4%)からも下方修正されました。最近、経済見通しの下方修正は見慣れたものとなっています。世界経済の成長は、多くの人の予想を裏切り続けていると言わざるを得ません。

国別に見ると、中国については、経済構造の変化(過剰投資の是正など)が成長の減速をもたらすとされています。米国では、ドル高などが成長を抑える見通しです。ユーロ圏では、高い失業率などが懸念材料です。日本の場合、成長率、インフレ率とも、従来の予想より弱いと指摘されています。

日本の低成長が際立つ

海外も冴えないのは、一部の人には好都合かもしれません。日本の実体経済が低迷する中、その原因は「世界経済の不透明感」であってアベノミクスの機能不全ではない、と信じたい人にとっては、です。

しかし、日本の低成長はひときわ目立っています。たとえば2014~16年の3年間(16年は見通し)、実質GDP成長率の平均はわずか0.3%です。これは約190か国中167位、主要先進国では最下位です。

そのため、日本の景気が良くないのは、あくまで内需(とりわけ個人消費)の低迷が主因と考えるべきです。これから景気対策を検討するにあたっても、まずはそうした国内の厳しさを直視すべきでしょう。

世界的な伸び悩みは当然

ただし、たしかに世界的にも好調とは言えず、先述のとおり予想を裏切り続けています。それは、米国、中国、ユーロ圏、日本などにおいて、それぞれが容易ならざる問題をかかえているためと考えられます。

つまり、米国は所得格差、中国はバブルの調整、ユーロ圏は移民問題、日本は人口減少、といった構造的な問題です。それらについては同様の先例や有効な対策が少なく、将来どうなるか、予想も困難です。

この四つの国・地域だけで世界のGDPの約6割を占めます。そして、各国の問題が簡単に解決できるような性質のものでない以上、世界の成長率が伸びないのは当然です。今さら驚く必要はありません。

「パナマ文書」の破壊力

成長率が伸びないのを所与の条件とすれば、有限の資産を公平に再分配することが重要となります。

ここで今、世界を揺るがしているのが「パナマ文書」です。中米パナマの法律事務所から流出した膨大なデータですが、これにより、多くの権力者や富裕者がタックス・ヘイブン(租税回避地)を使って「節税」に励んでいる実態が暴露されつつあります。その衝撃は計り知れません。税負担の公平性が長年にわたり歪められているとすれば、それを前提とする民主主義は虚構にすぎなかったことになります。

よって、課税逃れを防ぐ取組みが急務です。日本も5月の伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)では、表面的な経済成長よりも、この議論をリードすべきでしょう。成長を促すため財政支出を、というのが最近の流行ですが、原資となる税金が適切に徴収されない限り、負担と便益の不一致が広がるだけです。

 

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