中国の全人代で確認されたこと

2016/03/16 <>

全人代とは

3月5日から、中国で全国人民代表大会(全人代)が開かれています(16日まで)。毎年3月に開催される立法機関で、日本の国会に相当します(もちろん、代表者の選出方法などは大きく異なりますが)。

これは憲法上、最高の国家権力機関とされます。ただ、中国共産党が全体会議や委員会で決めた方針を追認する、形式的な大会との性質が強いのが実状です。そのため今回もこれまでのところ特別に目新しい施策は示されていません。それでも今後1年間の基本方針を確認するという意味で、やはり重要です。

目標は達成される

まず注目されるのは、全人代で正式に決まる実質国内総生産(GDP)の成長率目標です。というのも、中国の成長率目標は、かなり高い確率で達成される(あるいは、達成したことにされる)からです。

これについては今回、今年の目標を「6.5~7%」とする旨が確認されました。また、今年からの「第13次5か年計画(2016~20年)」の期間中、平均6.5%以上の成長率を維持するとされました。

これは意欲的な目標です。「本当の成長率」はすでに5%程度へ低下しているのかもしれません。とはいえ、実態と公式発表との乖離がこれ以上に広がらないようにするには、相応の景気刺激策が必要です。

実際、財政出動によって経済を支えるべく、財政赤字の対GDP比を3%へ拡大する方針が示されました(昨年は2.3%)。ただし、3%の赤字というのは国際的にみて特に大きくありません(日本は約7%)。

構造改革を継続

財政支出を極端に増やそうとはしないのは、無駄な施設や設備が増えるのを警戒しているからです。2008年以降の巨額投資により過剰設備と負債が膨らんだため、それらの調整が必要だと理解されているのです。つまり全人代では、成長を促すだけでなく、構造改革の必要性も再確認されたと言えます。

中国では自由な国政選挙がないと言ってよく、その点は欧米や日本からみると特殊です。ただ、長期的な展望のもとで経済成長と構造改革のバランスに配慮できるのは、大きな強みかもしれません。また、一党体制は政治腐敗を固定しやすいので、今回、反汚職運動を続ける旨が示されたのは正しいことです。

そのほか、技術立国を目指すことも強調されました。産業構造の転換を図り、ロボットなど先端技術で世界のトップ水準を目指すというのです。中国の資金力や教育水準を踏まえると、決して侮れません。

中国経済は崩壊しない

「建国以来、最悪」と言われる環境問題もテーマになりました。ちょうど北京で深刻な大気汚染が生じているだけになおさらです。この点は危機感が表明され、規制・罰則を強めることが確認されました。

金融市場が大げさに騒ぐ人民元については、相場の安定を保つ方針です。実際、2月以降は下落が抑えられており、外貨準備高も2月末には3.2兆ドルと、減少に歯止めがかかりつつあります。

以上のように中国は、総じて正しい道筋を歩んでいます。ただ、能天気な態度に徹しているわけではありません。李首相は全人代の冒頭、「中国はさらなる問題と困難に直面しており、厳しい戦いに備えねばならない」と述べました。そうした客観的な認識がある限り、中国経済は崩壊したりしないでしょう。

 

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