日本は孤立するのか?
G20期待は空振り
2月26、27日、上海にて20か国・地域財務相・中央銀行総裁会議(以下、G20)が開かれました。
開催にあたり、日本では期待がかなり膨らみました。2月の株価が冴えなかったので、ムードを変える契機になって欲しいとの願いからでしょう。円高の抑制につながる議論を期待する向きもありました。
しかしG20の合意内容は、そのような目先の期待に応えるようなものにはなりませんでした。
これは当然でしょう。日銀のマイナス金利が裏目に出て、2月の株安は日本株において顕著でした(ただ、3月は現時点で上昇)。また、支持率が株価に連動するような政権は、日本の現政権だけです。そのため海外では株価の下落に慌てた様子はあまりなく、G20期待はもともと小さかったのです。
また、円高が進んだと言っても、理論値に比べればいまだに円安水準です。たとえば、ドル円の購買力平価(物価差に着目した理論値)は現在106円程度といった見方に大きな違和感はありません。したがって今、円高の抑制に向けて主要国が一致団結するなどといったことは、まずあり得ません。
「脱・金融緩和依存」は大きな前進
とはいえ今回のG20では、為替や金融政策をめぐり、前向きな議論が少なからず行われました。
金融緩和に関しては、それだけではバランスのとれた成長にはつながらない旨、声明文に明記されました。「金融緩和の限界」が表明されたと言えるでしょう。実際、日本では異次元緩和にもかかわらず経済成長率は下がってしまいました。こうした日本の経験も、金融緩和限界論の広がりに貢献しています。
また、重要な政策変更を行う際には事前のコミュニケーションが必要、との認識も示されました。背景には、中国が急に人民元を切り下げたり、日銀が何の前触れもなくマイナス金利を発表したり、といったことへの懸念があります。たしかに皆が日銀のようなサプライズ狙いに徹したら、市場は大混乱です。
結局、成長を支えるには、各国ができる範囲で財政支出・減税や構造改革を行うしかありません。G20で確認されたのもそうした常識的なことですが、「脱・金融緩和依存」が示された点は大きな前進です。
それでも日銀は追加緩和を行うのか?
為替相場をめぐっても、全くの正論が表明されました。為替の無秩序な変動は望ましくないということ、並びに、輸出競争力を高めるために自国通貨安へ誘導するような政策は慎むべき、という二点です。
各参加者は、より率直に表現しています。たとえば英国の中央銀行総裁は、マイナス金利政策の内需刺激効果は限られる一方、それらを用いた通貨安競争は世界経済に困難な問題をもたらす、と述べました。
日本としては、矛先を中国へ向けたいところでしょう。ところが中国は今、むしろ人民元を買い支え、元安を抑えようとしています。よって通貨安競争が非難される際、日本は苦しい立場に立たされます。
市場では、日銀は3月にも追加緩和(マイナス金利幅の拡大など)を行うと期待する向きもあります。しかしG20での議論を踏まえると、これは極めて困難でしょう。それでも今の日銀は理屈を超越しているので、追加緩和で世界を驚かせるかもしれません。ただし、国際的な批判を浴びる覚悟が必要です。
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