日本株投資は意義を失ったのか?
期待外れの日本経済
最近の荒々しい相場をみて、日本株投資をためらう人も多いでしょう。それでも政府によれば、日本のファンダメンタルズ(実体経済の基本的状態)は良好で、市場の心理は悲観的すぎる、とのことです。
しかし正直なところ、実体経済も良好とは言えません。今月15日に発表された昨年10-12月期国内総生産(GDP)は、前期比0.4%減(年率1.4%減)です。首相は当初「政治は結果」と威勢が良かったものの、アベノミクスのもとでの3年間(12四半期)、マイナス成長はこれで5回目という結果です。
暦年単位でみると2015年は前年比0.4%増と、辛うじてプラスを示しました。ただし、14年は消費税増税の影響などでマイナス(同0.03%減)でした。その反動増などが見込まれていたことを踏まえると、0.4%増では明らかに期待外れです。年初には、2%近い成長率を「予想」する向きもあったのです。
悪化はリーマンショック級
GDPを構成する項目の中で、最も重要なのは個人消費です。割合が大きいから(GDPの約6割)、という理由のみならず、国民の物質的な豊かさは、かなりの程度、消費の大きさで測られるからです。
問題は、この個人消費が極めて弱い点にあります。それは14年に前年比0.9%減となった後、15年も同1.2%減に沈みました。2年連続の減少は、リーマンショックのとき(08年に同0.9%減、09年に同0.7%減)以来という異常な出来事です。すなわち消費の悪化は、「リーマンショック級」です。
15年は8%の消費税に慣れてきた上、原油安によるインフレ率低下という、景気の追い風(インフレにこだわる日銀には逆風)も吹きました。大企業の業績は良く、株価も高水準でした。にもかかわらず消費は悪化し続けています。自動車など幅広い品目が振るわないので、「暖冬」では到底説明できません。
アベノミクスで消費低迷
日本は人口が減りつつあり、必需品やインフラが相当程度そろったという意味で、成熟した国です。そのため、消費が急に増えるとは考えにくいでしょう。しかし人口減や成熟化は、この2年間で突然進んだものではありません。よってGDP、特に消費の低迷は、アベノミクスにも原因があるのは明白です。
ここで確認すべきは次の三点です。まず、消費税増税の影響は長引くということです(税率が下がるわけではないので当然ですが)。「増税の影響は軽微」の大合唱は一体何だったのでしょうか。消費の悪化は「リーマンショック級」である以上、来年4月(予定)の再増税も延期の可能性が高いでしょう。
次に、円安・株高による輸出企業と投資家への恩恵は、全体の好景気(GDP成長)につながりませんでした。トリクルダウン(恩恵の波及)は、現実により否定されました。逆に円安に伴う食品などの値上がりこそが消費減の大きな原因です。よって家計の観点からは、緩やかな円高を歓迎すべきです。
景気減速に備えるための日本株投資
しかし最後に、円安は良いことだという観念が市場では根強く、そのため、円安時に株価が上がる傾向も変わりそうにありません。したがって今後起こりそうな組合わせは、①円安・株高と景気減速、②円高・株安と景気回復、のどちらかでしょう。
職業的立場などを超えた広い視野から言えば、より望ましいのはむろん②です。ただ、①の可能性も小さくありません。
よって日本株投資は、「日本のファンダメンタルズが良好だから」ではなく、「景気減速(円安で購買力減)に備える」という点で、意義を持ち続けると考えられるのです。もし②になったとしても、景気回復(円高で購買力増)が見込めます。その場合、大抵の投資家は株安に耐えることができるでしょう。
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