中国悲観論を超えて
中国は「順調に減速」
中国経済については悲観的な論調が好まれますが、よくみればむしろ順調と言っていいほどです。
実質国内総生産(GDP)は昨年、前年比6.9%増と、一昨年の同7.3%増から減速しました。0%台とみられる日本の成長率に比べればはるかに高いものの、7%を割り込んだのは25年ぶりとのことです。
ただ、成長率の低下自体を悲観する必要はありません。各部門の傾向が重要で、特にサービス業の安定的な伸びに注目すべきです。これは、製造・建設偏重からの脱却という構造変化に沿っています。
小売売上や住宅販売なども回復しつつあります。データが信用できないと言われますが、賃金や消費が増えているのは確かです。そのことは、中国で雇用を行っている日本企業や日本の百貨店・観光地が一番よくわかっています。中国株は冴えないものの、株価が実体経済と連動しないのは日本と同じです。
AIIBの理念は正しい
中国の話題が絶えないのは、その影響力が高まっているためでしょう。年明けからの日本株の下落も中国不安が原因と言う人がいます。中国の景気減速の前にはアベノミクスなど無力ということでしょうか。
中国の影響力を象徴するのが、今月業務を開始したアジアインフラ投資銀行(AIIB)です。資本や人材で中国が主導する国際金融機関ですが、日本、米国、北朝鮮を除く大半の主要国が参加しています。
AIIBは、アジアのインフラ(生活・生産の基盤)向けに融資を行います。そうした資金需要は巨大であり、中国主導であることは、融資先である新興国の悩みを理解しやすいという利点もあるでしょう。
その理念や目的は正当です。よって日本や米国も、AIIBの足を引っ張るべきではありません。アジアにおける生活水準と人権の向上という一点を判断基準とし、必要であれば積極的に協力すべきです。
中国と台湾
ただし、中国が超大国化する中で、日本など周辺諸国は中国との関係を再構築する必要に迫られます。
台湾では今月、総統(大統領)・立法院(国会)の選挙が行われ、前評判どおり野党の民進党が圧勝しました(新政権発足は5月)。このため、中国と台湾との間で緊張が強まる可能性がないとは言えません。
民進党は伝統的に、台湾の独立を党是としているからです。また、台湾の多くの人は民主主義に誇りをもっているようで、中国とは違う国だと考えています。とはいえ新総統になる蔡英文氏は穏健な路線を志向し、台中双方が受け入れられる立脚点を探ると述べています。超大国である中国との対立は望まないが、台湾の固有性は守るということでしょう。こうした姿勢は、日本にも参考となるかもしれません。
日本や米国はどうなのか?
以上のように中国は今や、色々な面で世界の主役になっています。しかしだからと言って、中国の問題ばかりをやたらと騒ぎ立て、日本の問題(アベノミクスの行きづまりなど)から注意をそらそうとするのは賢明とは言えません。
また、もう一つの主役である米国の経済・政治の問題を軽んじることもできません。米景気は昨年終盤、失速が鮮明になったようです。にもかかわらず12月、利上げを始めてしまいました。その影響がどのように表れてくるのか(例えば、米国株安・原油安)。金融市場では今後、このことの方が中国の景気減速よりも重要だと認識されるでしょう。
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