日本株の下落は何を意味するのか?
日本株は下落記録を更新
日経平均株価は12日、前週末比479円安となりました。年初から6営業日連続の下落であり、これは戦後の最長記録です。為替はさほど大きく動いていないものの、「リスク回避姿勢」の強まりに伴い、ドル円は117円台前半まで円高が進んでいます(円高は日本にとって一概に悪いこととは言えませんが)。
こうした市場の動きに関し、中国の株式や人民元の下落が原因と言う人が多いのは、昨年夏に起こった世界同時株安のときと似ています。しかし今回の場合には、より複合的な背景があると考えられます。よって「中国ショック」で片づけるのでなく、もっと視野を広げて世界情勢を点検する必要があります。
蒸し返された中国リスク
たしかに中国株は年明け、大きく下落しました(現時点で約15%の下落)。ただ、昨年後半に比較的大きく上昇していたので、何らかのきっかけで売られやすい状況にありました。今回、そうしたきっかけとなったのが、大株主による株式売却禁止が期限切れを迎えることや、人民元の切り下げ観測などです。
ただし人民元が下落したと言っても、対米ドルで今年1~2%しか下落していません。また、米ドル以外に対しては依然として高く、特に対円では2012年末に比べ30%近くも人民元高です。これまで人民元が割高になっていた以上、それが調整されること自体は適切なことです。そもそもなぜ人民元の緩やかな下落が世界株の急落要因になるのか、説得力のある説明を提示できる人はほとんどいないようです。
また、昨年の中国株急落時に明らかになったように、株価下落が中国の実体経済に及ぼす影響は大きくありません。中国で株式投資を行っている人は1割強にすぎないからです。実際、中国の景気が最近急に悪化したという証拠はありません。よって、中国にかかわる騒ぎは次第に落ち着いていくでしょう。
戦争が起こるのか?
中国リスクよりも警戒すべきは、地政学リスク(紛争や戦争、テロなどにかかわるリスク)の高まりです。こうしたリスクが次々に表面化するのは、決して偶然ではありません。米国の威信低下や内向き姿勢の高まりなどを受け、世界の秩序が大きく変化しつつあることと無関係でないと考えられるからです。
最近の問題は、サウジアラビアとイランとの国交断絶です。ただ戦争が生じるとみる人はほとんどおらず、原油価格はむしろ下落しています。いずれも石油輸出国機構(OPEC)加盟国であり、対立の激化によりOPEC内で原油減産に向けた意思統一を図るのが一層困難になった、との見方からです。
また、北朝鮮においては、同国によると初の水爆実験に成功したとのことです。世界の核保有態勢への重大な挑戦です。ただ同国の場合、国威を発揚するため、この種の誇示をときどき行う必要があるという事情があります。これも、韓国や日本などとの戦争に発展する可能性は、現時点では低いでしょう。
日本株はアベノミクスとは無関係なのか?
以上のように中国リスクは昨年同様、騒ぎすぎの可能性が高く、地政学リスクについても最悪の事態は避けられるでしょう。
それでも、日本株が大きく下がっているのを軽視することはできません。とりわけ、中国経済とより密接な関係にある韓国や台湾の株式に比べても日本株の下落幅が大きくなっていることをどう考えるのか、という問題があります。
要するに、上がる場合も下がる場合も、日本株はアベノミクスなどよりも外部の要因次第、と言わねばならないでしょう。
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