今年の回顧、来年の展望-中国と原油というリスク

2015/12/24

今年を振り返ると、中国経済の減速や原油価格の下落が「リスク」と言われました。来年も、そうした状況が本質的に変わることはないと考えられます。しかし、いずれも心配しすぎる必要はないでしょう。

 

「中国崩壊論」は一服

中国経済は崩壊する、軍事的な脅威が増す、という「予想」は何十年も前から存在しますが、今年の夏、それが大流行しました。しかしその後、かなりトーンダウンしているようです。理由は三つあります。

第一に、単に人々や金融市場がそのような話に飽きてきたからです。これが一番大きな理由でしょう。

第二に、実際にも中国経済は回復の兆しをみせていることです。政策効果もあり鉱工業生産や住宅販売は緩やかに持ち直しています。消費やサービス業はもともと好調です。株価も安定を取り戻し、上海総合指数は昨年末比プラス13%と、プラス8%の日経平均株価を上回る好成績です(12月22日時点)。

第三に、秋に安保法制が成立した後、中国の脅威を言い募る必要性が低下したとの事情があります。そうした政治的な事情に振り回されないこと、これが情報リテラシー(解釈力・応用力)というものです。

とはいえ来年以降、中国の経済成長率は5~6%台へ下がっていくでしょう。といっても十分高い成長率です。中国などアジア新興国の勢いは健在であり、それは日本としても魅力的な投資機会です。

 

「原油安危機」は説得力を欠く

中国リスクをめぐる興奮が冷めた今、よく持ち出されるのは原油安です(今年も3割超の値下がり)。

ただ、これも本来、大騒ぎするほどのことではないでしょう。もちろん、高コストの原油採掘をしている企業は苦境に陥るかもしれません。しかし、世界中にリスクが伝染する可能性は低いでしょう。2008年の金融危機において震源となったサブプライム(信用力の低い人向けの住宅ローン)商品とは違い、原油関連の複雑な金融商品を世界中の投資家が大量に購入している、といった状況ではないからです。

もう少し懸念されるのは、原油輸出に頼る国の景気や財政です。特にロシアは今年、景気後退(マイナス成長)に陥りました。ただ、財政赤字は国内総生産(GDP)比5%台にとどまる見込みで、6%前後の日本よりは若干小さく、また、来年は改善しそうです。原油関連の収入減とともに、歳出も抑えているためです。緊縮策は景気の逆風にはなるものの、財政破たんという最悪の事態は避けられるでしょう。

 

来年の金融市場は?

原油自体が深刻な問題になるとすれば、逆に価格が急上昇する場合です。世界の個人消費が比較的好調なのは、原油安に伴う低インフレが主因です。インフレと言えば新興国につきまとう問題ですが、今は一部の国を除きそれが抑えられています。また、資源安の賜物である低インフレが続いているからこそ金融緩和を行うことができる、との面にも着目すべきです。

この点、原油の需要(例えば、中国における重工業からサービス業への重点シフトが原油需要を抑制)と供給(イラン産原油の供給増など)に鑑みれば、来年も原油価格が急上昇する可能性は低いでしょう。世界の消費者にとって朗報です。

ただ、金融市場は原油安を反射的に悪材料とみなし、これに伴って株価なども下がることが来年も頻繁にありそうです。また、中国リスクが蒸し返されることもあるでしょう。

しかし中国の減速や原油の下落は、世界を危機に追い込むようなリスクではないはずです。よってこれらを材料に株価などが下がった場合、あまり慌てすぎない方がよいでしょう。

 

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