欧米取材報告(1)-迷走する金融政策
11月前半、欧州(英国、ギリシャなど)および米国へ赴き、視察やヒヤリング、意見交換を行いました。パリの多発テロによる影響を免れ、こうして無事、取材報告を行えるのは幸運なことです。
まずは金融政策について報告します。ここに現代経済の問題が集約されていると確信したからです。
欧米の視点
米国(ニューヨーク)を訪れたのは10月の雇用統計が発表された翌週でした。その内容が非常によかったので、ほとんどの人が12月に利上げが開始されるとみていました。ただし、経済成長率に関しては、底堅いながらも向こう数年間は2%台半ば前後の緩やかな伸びにとどまる、と見込む人が大半です。
他方ユーロ圏については、欧州中央銀行(ECB)が年内に追加緩和を行うとみる人が多数を占めています。手段はECBによる資産購入の規模拡大・期間延長や中銀預金金利の引下げなど、根拠はECB総裁が10月にそれを示唆したこと、および低インフレです。ただ、デフレ入りは予想されていません。
また欧米金融機関の人が日本に関して持つ興味は、日銀の追加緩和の有無に絞られています。その問いに対しては、大幅な円高・株安の場合に限りそれが講じられる可能性あり、と答えるしかありません。
矛盾の原因
このように金融政策への見方は様々ですが、日米欧とも緩やかな経済成長が見込まれている点では共通しています。また、各国のインフレ率は中央銀行が目標とする2%には当分届かないとみられています。
つまり実体経済は似た状況にあります。また、各国ともインフレもデフレも特に懸念されていません。よって理論的には、いずれも金融政策を大きく変更すべき局面ではありません。にもかかわらず米国では引締め、ユーロ圏と日本では緩和と、異なる方向の変化が近い将来に起こり得ると想定されています。
そうした矛盾の原因は、各中央銀行と金融市場との意思疎通における、当初の狙いの違いにあります。
米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを示唆し出したのは、それにより米経済の好調を市場にアピールしたいとの狙いがあります。よってこれを見送り続ければ、米経済やFRBへの不信が高まります。
ECBや日銀の場合、超金融緩和で「インフレ予想」を押し上げるのを意図しています。よってインフレ率が高まらなければ、追加の金融緩和を少なくとも示唆しないと市場の期待を裏切る恐れがあります。
何のための金融政策?
つまり各国の金融政策を方向づけているのは、いかに金融市場の期待に働きかけるか、との配慮です。実体経済にとって適切か、では必ずしもありません。一方、市場参加者においては、政策の経済効果や副作用を考えるよりも中央銀行の本音を探ることに懸命です。
言い換えると日米欧の金融政策は、中央銀行と市場参加者との間で繰り広げられる、心理的なゲームの場と化しています。国民の暮らしをよくするという、経済政策の本来の目的からは離れていっています。金融政策の迷走と言わざるを得ません。
数字上は好調とされる米国や英国の景気も、現地の様子をみる限り、日本に比べずっとよいようにはみえません。しかしそのような実態をよそに金融政策は進められ、株式や為替は、それをめぐる思わくなどで不規則に、ときには激しく上下します。
これが市場の現実である以上、投資とはそうしたゲームに参加することだという、割り切った考えを持つ方がよいでしょう。
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