トルコの大統領選挙:「独裁」は続き、欧米を失望させるのか?
今年最注目の選挙
今年、最も注目すべき選挙の一つは、トルコの大統領選挙です。この選挙の結果は、トルコの将来を大きく左右するでしょう。それに加え、世界の政治や金融市場に与える影響も、おそらく大きいと言えます。
この重要な選挙の行方を、とりわけ欧米が緊張して見守っています。5月14日に行われたその投票では、現大統領のエルドアン氏と、野党統一候補のクルチダルオール氏による接戦となりました(図表1)。そして、いずれの得票率も過半数に届かなければ、5月28日の決選投票によって勝敗を決する予定です。
エルドアン大統領
トルコを約20年間も率いてきたエルドアン大統領は、欧米メディアなどによれば、「独裁」的な傾向を強めています。また、高インフレ(図表2)の中でも同大統領は、中央銀行に金融緩和を求めています。
さらに、エルドアン氏は、ロシアのプーチン大統領が持つ反欧米思想に共感している模様です。また、トルコ経済は、ロシア産資源などへの依存度が高いのが現状です。それらのためエルドアン氏は、対ロシアの経済制裁には消極的です。したがって欧米の主流派から見れば、同氏は欧米の結束を乱す人物です。
問われているもの
実際、欧米メディアでは、政権交代を望む論調が鮮明です。政権交代により欧米流の価値観がトルコで強まり、北大西洋条約機構(NATO、トルコも加盟)の結束も強固になる、といった期待のためです。
トルコは、欧州、中東、アジアに囲まれており、多様な文明が交わる国です。それだけに、トルコにおいて自由な民主主義といった価値観が優勢になれば、欧米流価値観の大きな前進と言えるかもしれません。一方、エルドアン氏が再選を果たした場合、トルコは欧米流の価値観からさらに離れていきかねません。
トルコ経済の今後
経済や投資の面においても、トルコの大統領選挙は大きな意味を持ちます。もしエルドアン氏が敗れれば、トルコと欧米との関係改善期待などから、海外からトルコへの投資などが活発化しそうなのです。
トルコの人口は8千万人を超え、国内総生産(GDP)で見た経済規模は世界の上位20位以内です。ただ、一人あたり経済規模は日本の約3分の1にとどまっており、若い人が多いため、経済発展の余力がまだ大いにあります。しかしそれを発揮するには、欧米などとの良好な関係や適切な経済政策が必要です。
金融政策や通貨は?
野党統一候補のクルチダルオール氏は、欧米との関係や民主主義的な価値観、中央銀行の独立性を重視しています。そのため政権交代が実現した場合、トルコの政治や経済が大きく変わる可能性があります。
クルチダルオール政権が発足すれば、例えば、インフレを抑制すべく金融引締めを促す可能性があります。今のトルコに必要なのは、そうした標準的な政策かもしれません。一方、エルドアン氏が再選を果たせば、欧米の主要メディアや多くの投資家は失望し、トルコの通貨は対ドルなどで軟調となりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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