米国経済の底力: 失業率は低水準、インフレは鈍化

2023/04/17 <>

米国経済は底堅い

米国では政治分断が著しく、世界では米国の存在感が動揺しています。この超大国の衰退は、止まらないように見えるかもしれません。しかし経済面などにおける米国の底力を、決して侮ってはなりません。

 足元の米国経済も、底力の一端を金融市場の参加者たちに見せつけています。利上げなどに伴い米国がリセッション(雇用、生産などの継続的な落ち込み)に陥るのは時間の問題、という見方が、昨年半ば頃から市場で増加しました。そういった見方に反し、米国経済は今、驚くべき底堅さを示しているのです。

雇用では強弱混在

実際、4月7日に発表された3月の米雇用統計では、雇用者数の底堅い伸びが確認されました。また、失業率は3.5%と低水準を記録しました。この点、人種間格差の縮小も、極めて明るい動きです(図表1)。

3月の雇用統計では、賃金の前年比の伸びが減速しました。それ自体は、多くの就業者には不愉快なことです。ただ、それによって、賃金増→企業のコスト増→様々な品目の値上げ→インフレ加速→賃金増→・・・、という循環が和らぐはずです。これは非常に重要であり、米国の中央銀行も大いに歓迎しているはずです。

米国も実質賃金減

賃金が多少増加しても物価がそれ以上に上昇していれば(=実質賃金がマイナス)、就業者は喜べません。それは多数の日本人が痛感していることですが、米国でも実質賃金はマイナスというのが現況です。

したがってインフレを抑制することが、米国民の幸福感向上に資するはずです(日本の場合も同様と考えられるものの、4月9日に就任した日銀新総裁はインフレの持続を優先する模様)。そしてこの点についても、米国では明るい動きが確認されつつあります。インフレの鈍化が、最近鮮明になっているのです。

インフレはどうか?

特に注目されるのは、消費者物価指数です。米国では4月12日、その3月分が発表され、前年比の上昇率は5.0%と、伸びの鈍化が鮮明となりました(ただし、「コア」のインフレ圧力は根強い。図表2)。

以上のように米国では現在、失業率は低水準であるにもかかわらず、インフレが鈍化しています。伝統的な経済学では、インフレ率の低下は失業率の上昇に付随するもの、と考えられています。その考え方に反し、ソフトランディング(インフレ鈍化と雇用の強さが並存)の動きが今、米国で起こっているのです。

米国の強みは何か?

利上げの影響などにより、今後は失業率が上昇するかもしれません。しかし現在までの雇用の底堅さは、驚くべきものです。米国経済の柔軟性と底力を表すものとして、市場参加者は素直に歓迎すべきでしょう。

柔軟性の背景には、米国の自由な資本主義的体質などがあります(例えば、再就職や起業が比較的容易であり、産業の新陳代謝が起こりやすい)。それらによる米国の底力を、次の覇権国候補・中国も、侮ってはなりません。衰退が米国以上に懸念される日本も、米国の柔軟性や自由をもう少し参考にすべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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