他人事ではない:トルコとシリアの大地震
大地震による犠牲
日本では、日銀の新総裁人事が話題になっています。たしかにそれは、日本経済にとって重要です。しかし世界では、もっと喫緊の問題があります。とりわけ、2月上旬にトルコとシリアを襲った大地震です。
この大地震で、4万6千人以上の死者が確認されています。まだ瓦れきの下敷きになった人がいるとすれば、死者数はもっと増える可能性があります。こうした悲劇を見ると、中央銀行の人事で盛り上がれる日本は、はるかに恵まれているのかもしれせん。しかしこの大地震は、日本にとり他人事ではありません。
日本に対する警鐘
何よりも、人命の価値において人種や民族による違いはありません。そのような本質的な点で他人事でないのは当然のこととして、現実的なリスクに関しても、この大地震は日本に多くのことを教えています。
まず、トルコは、日本などと同じく長大な活断層帯にある地震大国です(図表1)。そのためトルコは、地震への警戒を怠れません。しかし同国の現政権は、目先の経済成長や、政権とのつながりが強い建設業者などの利益を配慮し過ぎました。この点は、政財界が癒着している日本に対し、警鐘を打ち鳴らします。
建築規制について
実際、今回の大地震で、トルコでは膨大な数の建築物が倒壊しました。これについては、建築に関する規制が十分に適用されず、耐震性の弱い建築物が放置あるいは新築され続けたことが、原因の一つです。
トルコでは、1999年にも大地震が発生しました(死者数は約1万7千人)。それを受け、建築規制が強化されました。しかしそういった規制は、時間の経過とともに適用が緩くなりました。大地震から時間が経つと記憶が薄れる日本は、トルコの悲劇を教訓に、いま一度、地震への備えを強化せねばなりません。
シリアの独裁体制
トルコの隣国、シリアでも、今回の大地震で多数の人命が失われました。この国の現況は、トルコ以上に悲惨だと言えます。2011年に始まった内戦による苦難が、地震によって一段と増幅されているのです。
シリアのアサド大統領は、欧米メディアによれば冷酷な独裁者であり、内戦勃発以来、欧米とシリアの政府間で確執が深まっています。それが今回、欧米からシリアへの被災者支援を妨げ、犠牲者を増やしています。今後もこうした悲劇は起こり得るため、世界各国は他国との政治的対立を早急に緩和すべきです。
トルコも強権的に
トルコでも、エルドアン大統領が強権的な傾向を強めています。金融政策に関しては、自国通貨安(図表2)や高いインフレ率にもかかわらず、緩和的な金融政策を行うよう中央銀行に圧力をかけています。
トルコでは今年、大統領選挙が実施される予定です。インフレによる国民生活の悪化に加え、被災者の救済が今回遅延したことなどのため、エルドアン大統領はこの選挙で苦戦しそうです。同大統領は、超金融緩和策や円安などによるインフレを助長した日銀の現総裁同様、そろそろ引き際なのかもしれません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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