英国の混乱:とはいえ、ポンドは日本円よりは有望か?

2022/10/31 <>

英ポンドの変動

自国通貨安に関しては、様々な原因があり得ます。英ポンドについて言えば、対ドルでの今年の下落は、英国の景気減速懸念に加え英国政治の迷走が主な原因です。ただ政治面では、好転の兆しもみられます。

10月28日時点で、ポンドはドルに対し年初来14%ほど下落しています。ただし、9月26日につけた安値からは、8%を超える上昇となっています。直近の首相交代などを背景に、英国財政への不安が和らいでいるからです。事態はこのようにひとまず好転していますが、英国の前途は平たんではないでしょう。

英国政治の混乱

英国経済は、食品価格の上昇などに伴う高インフレや中央銀行の利上げなどにより、当面低迷すると予想されます。景気を刺激するための政策手段は限られ、政権に対する国民の不満は長引くと見込まれます。

政治の混乱は、今年半ばに深刻化しました。まず7月、相次ぐ不祥事を受け、ジョンソン氏が首相を辞任すると表明しました。これを受け9月、トラス氏が首相に就任しました。ところが10月、同氏も辞任し、スナク氏が新首相に就任したのです。これほど目まぐるしい動きは、先進国では通常あり得ません。

減税策への嫌悪

トラス氏の辞任を促したのは金融市場、と言えます。一時、英国の国債価格が急落し(利回り上昇、図表1)、ポンドもドルなどに対し急落したのです。トラス政権の減税策が、市場の嫌悪感を招いたためです。

トラス氏は、個人や法人に関する減税が自由な活動をもたらし、経済を成長させる、と信じる経済右派(保守主義)です。そうした思想を共有する財務相が9月23日、大型減税策を発表しました。こうした策は、財政赤字を膨張させかねません。そういった懸念などから、英国債やポンドが一時急落したのです。

スナク政権発足

市場の動きに驚き、トラス政権は、減税策の大部分を撤回しました。しかし政策をめぐる迷走は、政権支持率の急落や、与党・保守党内でのトラス氏への不信感を招き、同氏は結局辞任を余儀なくされました。

代わって首相となったのが、元財務相のスナク氏です。金融市場は、財政規律(赤字を抑制)を重んじる同氏の首相就任を、おおむね好感しています。そして英国債の利回りは低下し、ポンドも持ち直しています。しかしスナク政権の政策運営は容易でなく、ポンドドルの急上昇が続く可能性は低いとみられます。

日本との相違点

スナク首相は、市場の信頼を得るべく歳出抑制や増税を行わねばなりませんが、それらは目先の景気を圧迫します。よって与党の支持率が野党・労働党を大きく下回る構図(図表2)は、当面継続しそうです。

ただし英国では、民主主義が日本よりも根づいており、市場機能も首相を辞任に追い込むほど強力です。こうした機能が働く点は、官製相場と化した日本市場との違いです。そのため、日銀の金融緩和策などから年初来で足元約22%も下落している円がポンドのように急反発する、とは、当面見込みにくいでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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